半導体大手の米Broadcomは2月5日、同じく半導体大手のQualcommへの買収提案額を引き上げたことを明らかにした。新しい提案では、現金と株式を組み合わせた買収総額は1210億ドル以上となり、実現すれば、半導体業界で過去最大規模の買収となる。
1株当たり60ドルの現金と株式交換を組み合わせた1株82ドルでの新しい買収提案について、Broadcomは「最善かつ最終的な提案」としている。
Qualcommは、いまやスマートフォンやタブレットに広く採用されている「Snapdragon」チップセットのメーカーだ。Qualcommは5日、修正版の買収提案を受け取ったことを認め、財務と法務のアドバイザーらとともに取締役会で新提案の内容を協議すると発表した。
Broadcomは2017年11月に1030億ドルでの一方的な買収案をQualcommに提示したが、Qualcommは「当社の企業価値を過小評価している」としてこの提案を拒否。BroadcomとSilver Lake Partnersが提案した取締役会候補の人選についても、「矛盾しており、当社の取締役会に何ら技術力や専門知識を提供できるものではない」と批判していた。
調査会社Gartnerによれば、Qualcommは既にIntelと韓国Samsung Electronicsに次ぐ世界第3位の半導体メーカーであり、Broadcomに買収されることになってもこの順位に変動はない。
Broadcomの前身は、かつてPCメーカーHewlett-Packard(HP)の半導体部門が独立して誕生したシンガポールのAvago Technologiesだ。Avago Technologiesは2015年に370億ドルで旧Broadcomを買収し、その社名を受け継いだ。旧Broadcomはカリフォルニア州南部を拠点にチップを製造していた。
Broadcomは積極的な成長戦略を推し進めており、そうした戦略の一環として、登記上の本社を米デラウェア州に移す計画だ。現在Broadcomはカリフォルニア州サンノゼに本部を置いているが、登記上の本社はシンガポールにある。
一方、Qualcommは現在オランダの半導体大手NXP Semiconductorsを381億ドルで買収する計画を進めているが、この計画をめぐっては、欧州の規制当局による調査が続いている。Broadcomの5日の発表によれば、修正版の買収提案はQualcommによるNXP Semiconductorsの買収について、現行条件での成立か計画の停止のいずれかを前提としている。さらにBroadcomはQualcommが3月6日の年次株主総会を延期や一時休会としないことを求めている。
報道を受け、Qualcommの株価は時間外取引で2%下落。Broadcomの株価はわずかに上昇している。
Copyright 2018 The Associated Press. All rights reserved. This material may not be published, broadcast, rewritten or redistributed.