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自動運転の基幹技術、AIが読む「ダイナミックマップ」とは?(2/3 ページ)

» 2018年02月09日 18時03分 公開
[橘十徳ITmedia]

3Dの点群データと高精度位置情報をもとにベクトル地図を作成

 では、ダイナミックマップのベースとなる高精度3次元地図とは、具体的にはどのようなものなのだろうか。ダイナミックマップ基盤が公開している動画では、首都高速道路を走る車の目線から見たダイナミックマップのデモを見ることができる。これは点と線で構成された3次元のベクトルデータであり、道路中心線などの仮想地物(現実にはないデータ)も含まれている。

高精度3次元地図の作成プロセス(画像提供:ダイナミックマップ基盤株式会社)

 「ダイナミックマップのベースとなるのは、3次元の点群をベースとしたベクトル地図です。路肩縁や標識、レーン中心線などを含め、複雑な道路形状をデータベース化したものです。これらのデータを作成するには、GNSS(衛星測位システム)や六軸加速度センサー、IMU、光学カメラ、レーザースキャナー(LiDAR)などを装備したMMS(モービルマッピングシステム)と呼ばれる計測車両を使用します。このMMSが走行しながら、道路形状や標識、ガードレール、路面ペイントなどの位置情報を収集し、同時にカメラ画像とレーザースキャナーによる点群データを収集します」(中島氏)

MMS(モービルマッピングシステム)

 これらの点群データにはGNSSによる位置情報が付与されている。この位置情報は、スマートフォンなどに搭載されている一般的なGPSに比べて大幅に精度を向上させたFKP(Flachen Korrektur Pamameter:面補正パラメータ)方式で得た位置情報で、センチメートル級の精度を実現しているという。

 「レーザースキャナーによる点群データは、GNSSによる高精度位置情報と合わせて解析されて、全ての点にそれぞれX、Y、Z座標が付与されます。これらのデータやカメラ画像をもとに、自動走行車両が利用しやすいように地図情報をベクトルデータとして抽出し、区画線や停止線など実在する地物のほかに、中心線や車線リンクなどの仮想地物などもベクトル化します。このようにして作られたダイナミックマップ協調領域のデータベースをもとに、地図会社が独自のデータを加えて、自動車メーカーや部品メーカー向けに自動走行用の地図データとして提供します」(中島氏)

光学カメラで撮影した映像
レーザースキャナーで取得した点群データ
点群データからベクトルデータを生成
生成されるベクトルデータの内容

データ更新のために物流会社との連携も模索

 同社は現在、全国の高速道路と自動車専用道路でMMSを走らせ、3次元地図データの整備を進めており、18年度中に約3万キロ分のデータの作成を目指している。事業化してから半年が過ぎた今、データ整備をする上で見えてきた課題について聞いた。

 「事業化する前にサンプルデータを作成し、すでにほとんどの課題は見えていたので、それほど予想外のことは起きていません。ただ、やはりデータサイズの大きさについてはあらためて驚かされました。点群に加えて画像も付いてくるので、ペタバイト級の巨大なデータとなり、とてつもなく重く、ちょっとした道路のデータをダウンロードしようとしても1日か2日はかかってしまいます。実際に車に搭載するのは3次元ベクトルデータだけなので、元のデータに比べるとずっと小さいのですが、点群データはとにかくデータが大きいので、これをどのように扱うかが今後の課題となります」(中島氏)

 18年度中のデータ作成に向けて整備は順調に進んでいるが、その先は完成した地図データをどのように更新していくかも課題となる。これについて同社はどのように考えているのだろうか。

首都高速道路の高精度3次元地図
道路管理者や物流会社と連携してデータベースを更新

 「データの更新については、まず最も道路変化を把握しているのは高速道路の道路会社で、これらが発表した工事情報に合わせて情報を更新します。これで把握できない情報については、物流会社など、定期的に車を走らせている企業に協力を求めて、トラックに車載カメラを取り付けて撮影することも検討しています。実際に道路を走行して撮影することで、道路会社がWebサイトで発表していないような些細(ささい)なことも分かります。高速道路と自動車専用道路についてはもう完成のめどは付いたので、18年度後半くらいからは地図データのアップデートを提供する必要があると考えています」(中島氏)

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