ITmedia NEWS >

家電をつなげた先にあるもの 日立アプライアンス徳永社長に聞く“コネクテッド家電”の今と未来(2/3 ページ)

» 2018年05月11日 11時00分 公開
[山本敦ITmedia]

最先端の研究開発現場にユーザーの声がダイレクトに集まる

 今後、コネクテッド家電が実現する機能はどのように研究、開発されているのか。デジタルイノベーション推進本部長の笹尾氏に、日立のコネクテッド家電が開発されている最前線の状況を聞いた。

デジタルイノベーション推進本部長 CTOの笹尾氏

 「ユーザーが今の家電にどのような機能やサービスを求めているのか、日立グループの研究開発部門にはデータ解析やAIテクノロジーのエキスパートも多く在籍していますので、彼らと知見を共有しながらデータを価値に変える方法を日々検討しています。技術開発については社内の研究開発チームだけでなく、適材適所で外部のリソースも柔軟に組み合わせながらユーザーの声に応える体制を整えています」(笹尾氏)

 販売店やユーザーアンケートなどを通じてダイレクトに届く声に対して耳を傾けることも徹底している。漆原氏の説明によると、日立アプライアンスでは数百名の主婦モニターに製品開発のパートナーとして協力してもらい、製品の発売前後に実機の試用から得た声を研究開発にフィードバックする体制を敷いているという。またコネクテッド家電やIoT関連の製品やサービスについては、外部の学術研究機関とも連携しながらユーザーのニーズを解析することにも力を入れているそうだ。

 一方で日立は得意とする産業用エレクトロニクス事業の分野から得た知見や、ビッグデータ解析の技術も活かしながら新たな価値を創出するデジタルソリューションとして、独自のIoTプラットフォーム「Lumada」(ルマーダ)を立ち上げた。人々の暮らしを都市インフラの土台となる部分からまるごと支えようという、日立ならではのIoTテクノロジーについて徳永氏は次のように説明している。

「Lumada」(ルマーダ)の概要

 「日立グループは発電所に鉄道システムなど広範囲な事業領域を展開しています。日立アプライアンスの家電事業も含めて、一貫する普遍的な価値があるとすれば、それは高度な“セキュリティ”のテクノロジーを活かした安心をお届けできることです。産業用エレクトロニクスの分野で培ってきたノウハウは、従来のレベルを超えるセキュアな生活家電の開発につなげられるものと私たちも期待しています」(徳永氏)

 鉄道に自動車、ビルディングなどを含め、ルマーダが“街全体”のIoTソリューションをつないでいくことも視野に入れている。その壮大な構想を実現に結びつけるため、現在日立ではスマートライフ事業を立ち上げ、家の内外を含めてルマーダの可能性をさらに深く検証する実証実験を始めようとしている。その具体的な内容についても、近く明らかにされる日がくるはずだ。

音声コントロールの将来性は?

 日立アプライアンスが考えるスマート家電の事業戦略を中心に話題を展開してきたが、ここからは話題をもう少しプロダクト側に寄せながらインタビューを進めたい。

 新しいロボット掃除機「minimaru」はAmazonのスマートスピーカー「Echo」シリーズから、音声入力を使って遠隔操作ができる機能を搭載する。声やジェスチャーを使って家電製品をコントロールできる技術や機能の将来性を日立はどのように捉えているのだろうか。

Amazonのスマートスピーカー「Echo」

 「今はまだスマートスピーカーや音声コントロールが今後どのような“うねり”に成長していくのか、正直に言ってまだ明確に見えづらい状況です。でもそのうねりに飛び込まない限りは、次の可能性も見えてこないだろうという判断から新製品での対応を決定しました」(徳永氏)

 漆原氏が説明をつなぐ。「音声操作はユーザーの“困りごと”を解決してくれる可能性を持っていると考えています。最近は家電製品の操作が複雑になり、何か困ったことがあっても分厚い取扱説明書から回答を探すのもひと苦労です。音声操作はユーザーに家電操作を分かりやすく伝える有効な手段になると私たちはみています。特にシニアの方々には、家電製品をより親しみやすく感じていただけるものと期待しています」(漆原氏)

家電環境機器事業部 商品戦略本部長の漆原篤彦氏

 音声ガイダンスは日立がこれまでも力を入れてきた機能だが、ホームアプライアンス製品の場合は本体に搭載できるプロセッサーの処理能力やメモリ容量に限りがある。しかし、インターネットへのコネクティビティを持たせ、クラウド上の情報やAIを活用できれば、家電はリソースの制約から開放され、よりリッチで魅力的な機能を提供できる。日立はそう考えているようだ。

 「クラウドを活用したAIやディープラーニングのテクノロジーについても現在検討を進めているところです。今回発表したソフトウェア更新によって進化する家電というコンセプトを突き詰めていくと、家電が常時クラウドにつながりながら便利なサービスを提供する方向に向かっていきます。例えば、ユーザーの行動をリアルタイムに解析しながら便利な使い方を知らせたり、故障を未然に防ぐためのサポート機能を提供したり。そこには日立グループが建設機械や鉄道など大型エレクトロニクスの分野で培ってきた予兆診断のノウハウを家電に活かすチャンスもあるはずです」(徳永氏)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.