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「ネットはなぜネガティブなのか」を謝罪マスターと考える 竹中功×おおつねまさふみ対談第3回otsuneの「燃える前に水をかぶれ」(3/3 ページ)

» 2018年07月23日 16時58分 公開
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ネットの作法、マニュアル化はできる?

おおつね 生半可な感覚でやると、わりと痛い目に遭うことがありますね。例えば、若い女性がそれまで個人で「あるあるネタ」とかスイーツの写真とかを発信してきて、やがて企業に就職しましたと。そして上司から「おまえインターネット得意らしいから、うちの公式アカウントの運営任せるよ。ネットの感覚わかるんでしょ?」って言われて「はいわかります」って。これってありそうじゃないですか。で、それで失敗しちゃったのがキリンビバレッジの午後の紅茶公式アカウントのケースなんじゃないかと。

竹中 ああ、ありましたねえ。

おおつね もし女性担当者が、一個人として女性あるあるネタを発信してたら、ある種の自虐ネタになるところなんですけど。いざそれを企業公式アカウントが面白ツイートをしましたっていう文脈になったら「女性をバカにしてるのか」ってなるわけですよ。

竹中 今までの印刷物やデザインとかコピーだったら上司の人も相談できたし、上司の人も経験ありますよね。でも、今のネットは上司さえ経験がない。未知の世界なわけですから。そういう意味でもそれを支えるための教育が必要なんかも。おっちゃんらも教育受けたらいいんですよ、遅まきながら。

おおつね インターネットの初心者という意味では年齢層は関係ないですからね。

竹中 そういうのは一回体系化して教科書を作ったらいいんですよ。おおつねさんが作ったらええんとちゃいますか、教科書。いやほんまに。映画にしても、長い歴史のなかでR15とかR18とか後からできてきたルールがいっぱいあるわけじゃないですか。そういうのを作ればいいと思うんですよ。具合が悪かったらまた変えればいいし、そろそろ教育っていう分野に入っていく段階やと思いますよ。

おおつね 以前にも触れたように、完璧なマニュアル化というのは難しいんですけど、それに至る手前の、自分の立場をどう見極めるかっていう方法論だとかそれはできるんじゃないかと思いますね。例えば「不謹慎」なことってインターネット上でよく揉める原因になるんですが、いろんな方がおられまして、他人が怪我をしたとか、災害にあったということに「でも有名になって良かったじゃない」っていう風に本当にツイッターで発言してしまう人がいるんですよね。

竹中 政治家にもいますよね。「地震があっちのほうでよかった」みたいな。

おおつね 確かに、良い意味でも悪い意味でも有名になることで、復興支援という意味も含めて観光客がそこに行くようになるっていう面はあるんですよ。でもそれを第三者が言うと不謹慎になる。

竹中 自分事と他人事のどこに自分のスタンスを置いて伝えるかですよね。もしかしたら、被害に遭ったわけじゃなくても、言葉を変えたら言うてることがちゃんと伝わることもあると思うんですよ。みんなが応援することで、以前とおんなじだけの観光客が帰ってくるとか。そうすると不謹慎じゃなくなるわけじゃないですか。

おおつね そうですね。「有名になって良かったね」っていうのが、その被害にあったところに風評被害とか気にしないで「みんなで行こうよ」っていう意味になれば、共感は得られる話になり得ますよね。

竹中 根底にある胸のうちが黒いやつの場合は、とことん不謹慎やと思いますけど(笑)。そういう意味でも、自分事と他人事というか、相手の立場に立った時に使っていい言葉かそうでないかは、ちゃんと理解しておかなあかんでしょう。

おおつね なかには苦手な人もいると思いますけど、そういう場合は客観視できる人が介入して何らかの情報発信に関わったほうがいいと思います。

竹中 そこは無理せんほうがええんでしょうね。「言いたいことあんねんけど、うまいこといえんな」と思ったら、例えば誰かがどっかでこう言ってはったいうのを引用してきてね「こんな風に伝えてはったけど、僕もその通りやと思います。観光客も前に戻って良かったですね」言うたら「ありがとう」って言ってもらえると思うんですよ。一歩間違えたら「何言うてんねん」と言われますけど。

おおつね 「お前は関係ないのに言うな」ってなりますから。

竹中 そこらへんは表現の難しさもありますし、心に思ってること伝えにくいということもあるんでしょうけど。でも、そこでほんまに悪気あんねやったら、きっとそんな奴ぶっ叩かれるじゃないですか。心が清くて自分事みたいに感じられる人ならば、きっと失敗しないと思うんですよね。

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