ライトフィールドディスプレイは、単に立体的に見えるだけではない。例えばカメラ目線の人物を表示している時、視聴者が左に動くと画面の人物は右向きに、視聴者が正面に戻れば画面内の人物もカメラ目線に戻るといった具合に、実際の人物を見ているかのように視点が変わる。移動中は画面が切り替わったと感じるポイントは見られず、非常にスムーズだ。
ただし、69の光線を出すということは、69枚の静止画を同時に映し出すようなもの。キャラクターをある解像度で表示したければ、単純計算で69倍の解像度を持つ液晶パネルを使わなければならない。実際にはキャラクターの全体がクッキリ見えるわけではなく、画面ぎりぎりの位置に合焦し、背景や飛び出した腕などはボケる設定にしているが、液晶パネルには高い解像度が求められる。NHKメディアテクノロジーが4Kや8Kといった高解像度パネルにこだわってきた理由だ。
「解像度の情報量を立体に見せるために分離して使っていますので、実際に目に見える“解像感”はパネルスペックの16分の1から36分の1程度。8Kの17インチワイド液晶パネルの試作機で510ppi、新しい5.5インチ(UXGA)の試作機でも同等の精細さです」(林氏)
視野角は約140度で、奥行き感や飛び出し感のバランスは調整が可能だ。なお、69の光線数はすべて水平方向割で使われており、垂直方向は1光線のみ。例えばスカートをはいたキャラクターを下から見上げてもスカートしか見えない。この点は改善の余地がありそうだ。
また、必要な情報量が多いため、現時点でライトフィールドディスプレイ用の実写動画コンテンツは存在しない。実写のように見える女性のデモ映像は、「多数のカメラを設置したスタジオでモデル撮影を行い、デジタイズしたCG」(大塚氏)だという。
しかし、もともと3Dデータが存在するゲームのキャラクターなどであれば、同時に多数の画面を生成することも可能。69光線の場合でも「市販のゲーミングPCレベルのグラフィックス性能があれば問題ない」という。同社がゲームやアニメのキャラクターにターゲットを絞った理由だ。
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