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VRのキラーアプリはアダルトではなく「釣り」だOculus Go! Go! Go!(3/4 ページ)

» 2018年09月05日 08時00分 公開
[村上万純ITmedia]

釣りゲームを勧める理由

 まず、先述したような「説明不要なUI」がある。釣り針を投げ込んで魚を釣る行為は多くの説明を必要とせず、「!」マークが出たらさおを引く(タッチパッドに触れる)というのは多くの人にとって直感的で覚えやすい操作だろう。

オキュラス 魚がヒットした後はメーターの表示を見ながら糸が切れないよう調整する

 手の込んだアクションゲームや、これまで遊んだことのない新しいジャンルのゲームだと、まずはそのゲームの世界観やストーリー、操作方法などが分からないと楽しめない可能性がある。まだ多くのゲームは英語版なので、そういったゲームではチュートリアルの段階で挫折してしまうことが少なくなかった。

オキュラス 初めて釣った魚

 もう一つは“VR酔い”の問題。VR体験者なら1度は経験があるかもしれない。記者はこれまでさまざまなVRアトラクションや家庭用VRゲームを利用してきたが、あまりVR酔いを経験することはなかった。しかし、最近は誰でも美少女アバターになれる「バーチャルキャスト」や、VRリズムアクションゲーム「Beat Saber」などで酔いと疲れを経験した。

 VRはハマってしまうととにかく楽しい。つい夢中になってVR空間を動き回ると、想像以上に疲弊して体にダメージが残る。ジムのプールで一通り泳ぎ、いざプールサイドに上がろうとしたときに思うように体が持ち上がらない感覚に近い。

 ゲーム中に「ちょっと疲れたな」と感じたときには手遅れで、VRゴーグルを外した瞬間に脳と体に疲れがドッと出ることがあるのだ。1度この経験をしてしまうと、「次にプレイするときはしっかり体調を整えないと」とちょっとかしこまってしまう。

 釣りゲームは、ほとんど動き回ることなく、じっと目の前の魚と向き合うだけなので視点移動による酔いはあまり感じない。しかし、あまり長時間やり過ぎると当然疲れるので適度な休憩は必要だ。

オキュラス 釣りゲームはVR酔いしにくい

現実の釣りと、ゲームの釣り

 釣りゲームはVR以前からも存在する人気コンテンツだ。個人的にはゲームボーイ版「川のぬし釣り3」(1997年)や、アーケード版の「ゲットバス」(1997年)を遊び倒していた。これらのゲームを通して、子供ながらに「力任せにリールを巻いても魚が逃げること」「魚によってえさ(ルアー)を変えないといけないこと」「天候や気温で魚の出現が変わること」「川や海には“ぬし”と呼ばれる大魚がいること」などを学んだ。

オキュラス 「ゲットバス」(プレイステーション公式サイトより)

 このときは近くに海がある環境ではなかったので、実際に釣りに行く経験はほとんどなく、せいぜい釣り堀に行く程度だった。父親とよく通った所は、7メートル平方ほどの室内の真ん中に釣り堀があり、ぐるりと囲むように客が並んで団子のように丸めたえさを付けた糸を垂らす。

 魚の姿は全て見えているのに、なかなか釣れない。客が多いと、魚も早い段階で満腹になってしまうからだ。まだ小学校低学年だったので、釣れないことにイライラすることも多かった。しかし、ゲームでは必ず魚が釣れる。リアルの釣りはつまらないが、ゲームの釣りは面白い。当時はそう思っていた。

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