海難救助のプロが認めた潜水カエル——G-SHOCK「フロッグマン」25年間の軌跡(2/3 ページ)

» 2018年09月25日 10時00分 公開
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 水深を測る圧力センサーはプロトレック用のものがあったが、高度計として作られていたため水深計としての性能不足は否めない。センサーメーカーと話し合い、水深計として要望を満たすセンサーの開発を試みた。そしてセンサー開発のめどが立ったとき、次世代フロッグマンの方向性も決まっていた。最初に海上保安庁を訪ねてから1年が経過していた。

「皆で潜水士の国家資格を取得しました」と牛山氏

 これまで作ったことのない、海難救助のプロが使える本格的なダイバーズウォッチ。当時の開発チームの意気込みを伝えるエピソードとして、メンバーがこぞって「潜水士」の国家資格を取得したことが挙げられる。潜水士は、レジャーとしてダイビングを行うのではなく、潜水用具をつけて水中で作業に従事するプロの資格だ。

 「資格の取得を通じ、業務として潜水する際に必要な知識を得ることができました。例えば深い場所から急に浮上すると減圧症(体液に溶け込んでいた気体が減圧によって気泡となり、血管を閉塞することなどで起こる各種症状)の原因になります。ダイバーが急浮上するとアラームを鳴らす機能も必要だと分かりました」

「GWF-D1000」(2016年)

 2016年に発売した「GWF-D1000」は、G-SHOCKとして初めて水深、方位、温度の計測を可能にした「トリプルセンサー」を搭載し、潜水中にも自分のいる場所や潜水時間が手元で把握できる。しかもコンパスは腕を水平にしていなくても方位を正確に計測可能な「自動水平補正機能」付きだ。「水中のダイバーは姿勢が安定しないのが普通ですし、腕の水平を気にする余裕もありません。そこで角度を測るセンサーを別に搭載し、水中でもすぐに方位が分かるようにしました」(牛山氏)

 もちろん急浮上を検知するとアラームが鳴る機能も装備。潜水時間など重要な情報をウォッチフェイスの最も目立つ場所に配置するなど各所に工夫を凝らした。水中作業ではウエットスーツの上に腕時計を装着するためバンドは長めになっている。

ウエットスーツの上に装着する(海上保安庁モデルの公式動画より)

 価格は12万5000円(税別)と前モデルの倍程度まで上がってしまったが、海難救助のプロはもちろん、プロのニーズに応える“本物”として一般の腕時計愛好家からも高い評価を得る。「今では(海難救助のプロダイバーたちに)かなりの比率で実際に使ってもらっています」と牛山氏も満足げだ。長めのバンドも、分かる人には分かる格好良さのポイントになっているという。

海上保安制度創設70周年を記念した「海上保安庁モデル」(公式動画より)

 18年には海上保安庁とのコラボレーションが実現し、海上保安制度創設70周年を記念した「海上保安庁モデル」を発売。派手な蛍光イエローのバンドは、濁った海中でもダイバーの所在を分かりやすくするため、海上保安庁が正式採用しているウエットスーツの色だ。官公庁が企業に協力することは少なくないが、商品にロゴの使用まで認めるケースは希だ。

 「16年に発売したイルカ・クジラモデル、18年の海上保安庁モデルなど、限定モデルは常に反響が大きいです。フロッグマンは、G-SHOCKの中でもユーザーに愛されているシリーズだと実感しています」(牛山氏)

極地でも活躍するフロッグマン

 GWF-D1000は思わぬ所でも活躍した。18年1月、東京海洋大学と国立極地研究所のチームは、第59次南極地域観測隊として小型無人探査機(ROV)を用いた南極大陸の湖沼調査を実施した。その際、ROVの深度計・方位計として改造したGWF-D1000を使用したという。

 氷と湖底の狭い隙間にも侵入するROVは小型軽量化が必須。腕時計というコンパクトなパッケージに必要なセンサーが詰め込まれ、しかも水平を保たなくてもコンパスが働くGWF-D1000はうってつけだった。「通常、GWF-D1000のコンパス表示は時間がたつと計測を止めてしまうため、それをキャンセルしてROVのカメラの前にくくり付けました。調査隊はROVから送られてくる映像でGWF-D1000の表示を確認しながら、ROVを操縦したんです」(牛山氏)

小型無人探査機(ROV)。深度・方位計の部分をよく見るとGWF-D1000がROVのほうに向けて固定されている(出典:東京海洋大学)

 ROVが活動する間、フロッグマンは極寒の水中にさらされ続けたが、耐衝撃ウォッチ「G-SHOCK」の看板に恥じない耐久性で調査を成功に導く。ファンの間に語り継がれているフロッグマンの武勇伝だ。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2018年10月24日

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