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あなたはアンドロイドを殺せるか? 「Detroit: Become Human」で考えるAIと人間の未来(2/3 ページ)

» 2018年10月03日 08時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 また、近未来SF漫画「AIの遺電子」では、ヒューマノイドの恋人が無機質なモノリスの姿になってしまって戸惑う彼氏(こちらもヒューマノイド)が描かれていた。

 人間とは程遠い外見になったが、そんな彼女を思いやることで、皮肉なことに2人の絆は以前より深まった。こちらは、外見ではなく内面にその人らしさを感じているケースだ。

 話を戻そう。Detroitでは、ゲームキャラがプレイヤー(私たち)にアナログハックを仕掛けているといえるかもしれない。人間に暴行された男性アンドロイドを見れば同情するし、小さな女の子の姿をしたアンドロイドがおびえていれば、手を差し伸べたくなる。自分がキャラを操作しているつもりで、実はキャラに操作させられているのかもしれない。

 アンドロイドの視点になって生活するのは不思議な体験だ。人間に従い機械として振る舞えばいいのか、自分の感情を優先して行動していいのか、分からなくなる。「アンドロイドは単なる便利な機械なのか。それとも生きものなのか」。これはDetroitが問いかけるテーマの1つでもある。

 例えば、家事をサポートする女性型アンドロイドの「カーラ」。彼女は、料理を作り、洗濯をし、ごみを拾い、子供の相手をする。洗濯をする場合は、衣類を放り込み、洗剤を入れ、洗濯機を回すという動作ひとつひとつを細かく操作する。

デトロイト 公式YouTubeより)

 私たちが日常生活で意識せずにこなしている作業も、実は小さな判断の連続なのだと改めて気付かされるが、アンドロイドは「面倒くさい」なんて思わず淡々と作業をこなしていく。しかし、プレイヤーである私はこの作業を面倒だと感じている。この“ズレ”が、物語を進めるうちにだんだんなくなっていくのも面白い。キャラ(アンドロイド)にどこまで感情移入できるのかも、ゲームの楽しみ方の肝になるだろう。

デトロイト 公式YouTubeより)

アンドロイドを殺していいのか

 Detroitの世界では、アンドロイドは「所有物」であり、参政権や基本的人権などは持たない。アニメ「イブの時間」のように、アンドロイドを「便利な道具」と考える人も多い。電車やバスなどの公共交通機関では、人間と別にアンドロイド専用の乗り場と立ち乗りスペースが設けられている。1950〜60年代の米公民権運動で黒人席を設けたバスを想起させる設定だ。

 アンドロイドを壊すと罰金刑が課されるが、職を奪われた人間はアンドロイドを暴行し、破壊することもある。主人公の1人「マーカス」を操作し、街中を歩いていると、反アンドロイドデモをしている失職者にいきなり殴られるシーンがある。我慢するのか、やり返すのか、判断に迷う所だろう。仮に主人公が人間だとしても、暴力に訴えて仕返しをするのかは悩ましい。

デトロイト 公式YouTubeより)

 Detroitには「絶対的な正解」がない。主要人物が死んでしまい、間違った選択をしてしまったかなと思っても、物語は止まらない。アンドロイドはどうあるべきか、人間はどうあるべきか、整理がつかなくても容赦なく物語は進んでいくのだ。

 個人的に「究極の選択」を迫られた印象的なシーンがある。

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