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#GoogleWalkout が、GoogleにもたらすものGoogleさん

» 2018年11月04日 06時57分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 Googleの従業員が、職場でのセクハラや不正行為温存体質、不透明性、不平等な職場環境の改善などを求め、11月1日に世界中のオフィスで抗議デモを行いました

 walkout 1 本社キャンパスではドロイド君像も参加(画像:Google Walkout for Change)

 この運動を主催したチーム「Google Walkout For Real Change」は翌2日、Mediumへの投稿で、世界の50都市のオフィスで2万人が参加したと報告しました。(東京も参加したそうなのですがツイートや画像がみつかりません。)同社の9月末時点の従業員数は9万4372人なので、約2割の従業員が参加したことになります。

walkout 2 サンフランシスコオフィスの従業員デモ(画像:Google Walkout for Change)

 Googleの幹部チームは、ピチャイCEOが週明け(11月5日)にもろもろの要求に対応するための計画を検討する幹部会議を開くと主催チームに伝えてきたそうです。大きな成果です。

 この運動のきっかけは、2014年に退社したアンディ・ルービンさんが従業員にセクハラしたことをGoogleが知っていたのに解雇もセクハラについての公表もせず、9000万ドル(約100億円)の退職金まで払っていたという10月25日付のNew York Timesの記事でした。

 “Androidの父”と呼ばれるルービンさんがGoogleで2013年にAndroid担当から外されたとき、ラリー・ペイジCEO(当時)は「アンディはAndroidのリーダー役を他に譲り、Googleで新たな章を開く決心をした」と公式ブログで語りました。

 次のポジションが決まっていなかったのに、Android担当をスンダー・ピチャイさん(今のCEO)に譲った理由は、今にしてみればセクハラ報告があったからだったんですね。

 Googleは被害者であるルービンさんの部下からの報告について調査し、この訴えの信頼性が高いと判断したけれど、ルービンさんには「辞職するようにお願いした」だけでした。

 2016年に退社したGoogleフェローのアミット・シングハルさんも、実はセクハラで退社したことが後で明らかになりました。New York Timesによると、シングハルさんも「数百万ドルの退職金をもらった」そうです。

 New York Timesの記事で、やはりセクハラしていたと報じられたGoogle X(現在はAlphabetの「その他」部門下)の中心的な人物であるリチャード・ディボールさんは記事が出た後、10月30日に退社しました(退職金はなし)。

 セクハラの被害者が会社に報告するのはすごく勇気がいることでしょうに、人事部から「問題はあなたにある」と言われた人もいるそうです。

 男女や人種による従業員構成はGoogleが毎年公開しているDiversity Reportで確認できますが、セクハラや人種差別問題は、なかなか表に出てきません。

 昨年8月には、Googleの男性エンジニアが「女性はコーディングに向いてないからエンジニア構成を無理に男女半々にするべきじゃない」という社内文書を公開して物議を醸しました。このエンジニアは、自分が差別しているとも思っていないようでした。

 今回の2万人参加のデモでは、被害者が勇気を出してセクハラや人種差別の体験を語っており(Mediumの投稿でも紹介されています)、それを読むと被害者への会社の対応はお世辞にもまともとは言えず、二次トラウマになりそうです。

 walkout 3 ミシガンオフィス(画像:Google Walkout for Change)

 このデモでは、セクハラだけでなく、「Project Maven」や「Dragonfly」など、「Don't be Evil」に反するのではないかというプロジェクトの不透明性をなんとかしろ、という要求も掲げています。

 この運動の主催者たちは、はっきり名前を公表しています。2007年にGoogle入りし、現在はYouTubeでキュレーションを担当しているニューヨークオフィスのクレア・ステープルトンさん、Google Open Researchを立ち上げたAI研究者のメレディス・ウィテカーさん、2016年入社でGoogle News LabのUS Partnerships Leadを務めるエリカ・アンダーソンさんなど。

 こんな大規模なデモを画策したら、クビ覚悟になりそうですが、ピチャイCEOはデモの前に全社メールで「皆さんの怒りは分かる」とこのデモをサポートすると約束したそうです。

 デモは衝動的に企画されたわけではなく、長いこと従業員が幹部チームに改善を求めていたけれど「誰もわれわれのために解決しようとはしないという結論に達した」ので踏み切ったとThe Cutへの寄稿で説明しています。

 世界の従業員間の連絡手段には何を使っていたんでしょうか(Google+ではないでしょう)。GoogleWalkoutのTwitterアカウントを立ち上げ、「#GoogleWalkout」というハッシュタグでのツイートを呼び掛けた効果はかなり高かったと思います。

 walkout 4

 SNSが普及してフェイクニュースの拡散のような問題もありますが、弱者が団結して会社(とか社会とか)にインパクトを与えられるようになったのは確かだなと実感しました。

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