この記事は認証セキュリティ情報サイト「せぐなべ」に掲載された「架空世界 認証セキュリティセミナー 第3回『架空世界で生体認証』」(2017年8月10日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。当時未発売だった製品やサービスの記述などは、本記事掲載時の状況に合わせて編集しています。
……それでは講義を始める。
まずは前回のおさらいからだ。「所有物認証」として「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の「シーカーストーン」、「水戸黄門」の「三つ葉葵の印籠」、「遠山の金さん」の「桜吹雪の刺青」を紹介した。いずれも個人が所有している「鍵」となる物体が認証のキモとなるものだった。
さて、今回は「生体認証」だ。人間は全て千差万別の特徴を持っている。それを利用し、例えば「顔」や「声」、または「指紋」や「虹彩」のような、双子であっても全く別の形をもつ部分を使って個人を識別し、認証する。「『誰か』あるいは『何か』が、特定のものであることを確認する行為や仕組み」としては、かなり良くできた仕組みではないだろうか。
君たちが最も慣れ親しんでいるのは、一部のスマートフォンにある「指紋認証」だろうか。同様のシーンは当然架空世界にも登場する。
まず手始めに紹介する架空世界はアニメ「東のエデン」だ。
まずは基本データから。
2009年4月からフジテレビ系深夜で放送されたアニメーションで、原作と監督は「攻殻機動隊 Stand Alone Complex」などを監督した神山健治。記憶喪失の青年、滝沢朗が82億円分の電子マネーの入った「ノブレス携帯」という携帯電話を持たされ、同じ「ノブレス携帯」を持つ12人の「セレソン」と「セレソンゲーム」という、「日本を救う」ための、負ければ死の待つゲームへ巻き込まれていく……、といったストーリーだ。
ちょっと昔の作品にはなるが、NetflixやHulu、dアニメストアなどで配信されている。近未来ものが好きな方や、どう転がるか分からない展開にドキドキしたい人にはぜひオススメしたい。
さて、主人公滝沢朗が持っている「ノブレス携帯」、82億円もの電子マネーが入っており、電話一本でその使用も可能という非常に便利な携帯電話なのだが、もちろん他人に使用されるリスクがある。そのため、「ノブレス携帯」には指紋認証のセキュリティがかけられている。2009年といえばiPhone 3GSが新発売された時期であり、一般のケータイには指紋認証は普及していなかったことを考えるとかなり先進的だったといえよう。
ところで、「グミ指」(※1)などで指紋認証を突破してしまえばよいではないか? と考える諸君もいるかもしれない。しかし、この「ノブレス携帯」の使用方法はちょっと変わっている。音声通話で「ジュイス」と呼ばれるコンシェルジュと会話し、電子マネーを使用するのだ。当然「ジュイス」は声色で喋っているのが滝沢本人かどうか分かるだろうから、他人が奪っても使用するのは難しいだろう。「声紋認証」も併用していると想像できる。
ちなみにコンシェルジュ「ジュイス」は通話を終える際、毎回セレソンとしての義務を思い出させる一言を言ってくる。「ノブリスオブリージュ」(高貴さは義務を強制する)だ。このせりふに加えて、たまに皮肉な一言まで言ってくる「ジュイス」、タダ者ではない。
※1……グミ指とは、指紋を写し取ったグミを作る手法のこと。グミとは食べ物のグミのことだ。全ての指紋認証デバイスに通用するわけではないものの、現在の民生用であればほぼ突破できるといわれている。
話が逸れてしまった。生体認証は何も指紋認証だけではない。そのほかの生体認証と、それが登場する架空世界も手短に紹介していこう。
まずは「顔認証」から。最近の「Surface」などのWindows PCや一部のスマートフォンでは、付属のカメラで顔を判別してログインできるものがあるが、それと同様の原理だ。この顔認証、双子でも区別できるものもあるくらいなので、他人がなりすますのは難しい……と思ったが、なんと顔を手術で入れ替えるという無茶苦茶をやってのけた架空世界があった。
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