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「メタルギアソリッド」と「東のエデン」で注目したい“生体認証” 架空世界で「認証」を知る(3/3 ページ)

» 2018年11月06日 08時00分 公開
[朽木海ITmedia]
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 ナノマシンとは分子機械の一種で、ウイルス程度の大きさを持つ。ウイルスが健康を害するものであるのとは逆に、宿主の身体機能を向上させる。さらには体内に通信機能まで持つことができるのだ。このナノマシンはシリーズ中でも最も重要な要素として度々登場する。詳しくはプレイしてその目で確かめて見てほしい。

 このナノマシンの機能の1つに、近距離無線通信(NFC)により認証できた扉を自動的に開くという能力がある。所有物認証のように他人に奪われることもなく、知識認証のように記憶したり、パスワード入力作業をしたりする必要もない究極の認証ではあるが、ゲーム内では対応したドアのセキュリティカードをいちいち入手しないといけないというトホホなオチがついている。それならナノマシン通信を使わなくても良いのでは……? とは思うが、ナノマシンが注入された兵士の中でもセキュリティカードを持っている者だけが開けるという「二要素認証」なのかもしれない。二要素認証については、今後の講義で紹介しようと思う。

架空世界

ついに現実にも登場した「後付け生体認証」

 「メタルギアソリッド」のような高機能なナノマシンはまだ開発されていないが、体内に埋め込むことで認証ができる「マイクロチップ」は現実にも登場している。

 2017年7月に、米国の自販機用ソフトウェアメーカーが、希望する社員の手にマイクロチップを埋め込み、埋め込んだ手で自販機の代金の支払いやドアの開閉が行えるようにしたとのニュースがあった。

 ただ、「メタルギアソリッド」のナノマシンと比較すると相当大きいし、健康被害などの問題もありそうだ。そもそも「メタルギアソリッド」でもさまざまな健康被害が……おっと、これ以上はネタバレ自粛だ。とにかく、後付けの生体認証は決して夢物語ではなく、ちょっと先の未来では君たちも使っている可能性が高いことを覚えておいてほしい。

生体認証は万能か? 架空世界の想像の羽根はもっと広がる

 さて、今回は生体認証が登場する架空世界を紹介してきた。

 実際の生体認証は「グミ指」のように偽装する手段があることや、「形の一致率的にほぼ本人だろう」という、高精度ではあるものの確実ではない仕組みなため、万能とは言えない。

 また、現実世界では生体情報は個人情報の最たるものなので、規律や倫理といった問題も発生するだろう。

 認証技術は今後も発達していくだろうが、「フェイス/オフ」に登場する顔を入れ替える手術のような、突破するための手段も同様に発達していくことも念頭に置く必要がある。

 では、それすらも飛び越えた究極の認証方法はないのだろうか……?

 実は、先ほど取り上げた「メタルギアソリッド」の物語中でも登場する「遺伝子」を使った認証や、「精神感応」を応用した認証など、現実世界では実現していないものも架空世界には登場する。次回はそうした「次世代」の、もしくは「伝説的」な認証を取り上げよう。では、今日はここまで!

著者プロフィール

朽木 海 (ライター、編集者、γ-Reverse代表)

ゲーム会社や出版社などの「IPが欲しい会社」と、ライトノベル作家や脚本家、漫画家などの「IPを作りたいフリーランス」を繋げるためのプロジェクト「γ-Reverse」の代表。引き続きライター業や編集者業も行っています。

せぐなべ」にて「オンラインゲームセキュリティガイド〜正体バレても大丈夫?ネットの向こうにご用心〜」を執筆。

「せぐなべ」紹介

ITを活用する上で無視できない認証とセキュリティの話題を、楽しく分かりやすく伝える認証セキュリティの情報サイト「せぐなべ」。運営企業のパスロジは、企業向け認証プラットフォーム「PassLogic」や個人向けパスワード管理アプリ「PassClip」などを提供。ITmedia NEWSで認証関連の話題を分かりやすく解説する「今さら聞けない「認証」のハナシ」を連載中。

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