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「AI書店員」が本をお薦め、ディープラーニングで表情分析 トーハンがAIに取り組むワケ(2/2 ページ)

» 2018年11月26日 09時30分 公開
[岩崎史絵ITmedia]
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 吉村さんは「開発のきっかけは、5年半前に始まった社内プロジェクト『ほんをうえるプロジェクト』だ」と当時を振り返る。

 「通常、書店では新刊が発売されると力を入れてプロモーションを展開するが、そのまま売れずに埋もれていく出版物が多いのが現状。そこで、過去に出版された既刊本の中にある素晴らしい本を私どもが発掘し、売り方を考えて書店に提案するという試みを始めた。短いスパンで成功を判断するのではなく、植物を植えて成長するのを待つように、じっくり良い本を提案することから『ほんをうえるプロジェクト』と名付けた」(吉村さん)

 このプロジェクトでは、書店への働きかけの他、SNSやブログでも「お薦めする既存本」を紹介している。こうした活動を展開する中、「AIやIoTのようなテクノロジーの発展で、リアル書店でも面白い試みができるのでは」と思い企画したのがミームさんだったという。

 開発に協力したsMedioは、大手家電やPC用の映像ソフト再生開発を主事業とし、画像解析技術を磨いてきた開発会社だ。ミームさんは、sMedioにとって初めてのB2C向けソリューションとなる。

トーハン 開発を担当したsMedio(上原宗尚さん、宇佐美將生さん、馬場秀明さん)

 ミームさんは17年11月に初登場。新宿や池袋、東京駅の書店で開催された「アガサ・クリスティフェア」で、書店を訪れた人に合わせてクリスティ作品をお薦めしていた。

 その後も「2018 本屋大賞」(2018年2月〜)とコラボした他、今年8月からはTBSラジオの番組「好奇心プラス+」の企画から生まれた、アニメ「秘密結社鷹の爪団 吉田くんコラボ」バージョンが東京駅や中野駅の書店に設置されている。

 海外イベントへの出展にも積極的だ。台湾で開催された「台湾・台北国際書展 2018」で、日本ブースにミームさんを展示。現地の出版関係者がミームさんに興味を持ち、体験するために長蛇の列ができたという。今年3月に神楽坂で開催された「本のフェス 2018」では、1日で600人以上がミームさんを体験した。

 「出版社からも、『プロモーションに使いたい』と問い合わせをいただいている」と吉村さん。トーハンではミームさんの取り組みの他に、本業である出版流通の効率化に向けてAI導入を検討しているそうだ。

 新たな本との出合いを求めている人は、どこかの書店でミームさんに出合ったら体験してみてはどうだろうか。

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