金属をまとった「G-SHOCK」――懐古と先進と矢野渉の「金属魂」特別編(1/2 ページ)

35年の歳月を経て登場した初代「G-SHOCK」の金属バージョン「GMW-B5000」。そして最新技術で新しい耐衝撃構造を実現したクロノグラフ「MTG-B1000D」。趣きの異なる2つの腕時計をカメラマンの目線で探ると新しい魅力が見えてきた。

» 2018年11月29日 10時00分 公開
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時計は大人の入り口だった

 僕にとっての腕時計の原点は、中学の入学祝いにもらった、ステンレス製の筐体とベルトを持つピカピカの時計だった。それまで使っていた玩具のようなディズニー時計(ミッキーの両手が短針、長針になっている)とは違う、初めての大人感覚の持ち物だったと思う。

 金属製だからそれなりの重さがあり、左手に感じる重さを楽しんでいた。また、機械式で「自動巻き」というところも、僕の軽い理系志向をくすぐった。あえて緩めに調整してもらった金属バンドをチャラチャラいわせながら左腕を震わせ、ゼンマイを巻くのが日常化していた。中二病といわれればその通りだが、僕はこの金属にぞっこんだったのである。

 それから十数年、腕時計はほとんど誤差のないクオーツ時計が席巻し、高価なものではなくなってきた。もちろん手工業的製造を続ける古くからのメーカーは生き残ってはいたが、普通に売れる腕時計は安いクオーツばかりになった。

 そんな中、1983年にカシオ「G-SHOCK」は生まれた。「耐衝撃性能」「タフネス」を売りにした新しい時代のクオーツ時計は瞬く間にファンを増やし、「G-SHOCK」というジャンルを作ってしまうまでになった。

 この時代の頃はよく覚えている。バブル直前の、ちょっと熱を帯びたような世相というか、忙しくて写真の仕事などいくらでもあった時代だった。G-SHOCKのタフネスさは時代にマッチした機能だったのかもしれない。

 しかし、僕はこの初代「DW-5000C」のウレタン素材のベルトと筐体がどうにも受け入れられなかった。耐衝撃性能ということを第一に置けば、軽くて柔らかいウレタンは最適の素材なのは分かる。ただ、ウレタンはやがて劣化する。表面がツルツルしてくる。オール金属のDW-5000Cが出たらなあ、と僕はずっと思っていたのだ。

「GMW-B5000D-1JF」(後)と「MTG-B1000D-1AJF」(前)

 35年の歳月を経て、2018年春、ついにDW-5000Cの金属バージョン「GMW-B5000」が発売された。僕を含め金属のDW-5000Cを熱望していた人たちは多かったようで、なかなか製品が店頭に並ばないほどの人気になった。GMW-B5000は、内部モジュールを点で支えて浮遊させるという構造が売りだったDW-5000Cの細部をさらに進化させ、金属筐体での耐震動を可能にしたのだ。

 そしてG-SHOCKで金属といえば、もう一つ忘れてはいけないモデルがある。10月に発売された「MTG-B1000D」は、堅牢性を維持したまま、さらなる小型化と薄型化を目指し、新しい耐衝撃構造に行き着いた「MT-G」シリーズの最新モデルだ。

 今回はその2つをお借りできたので、僕なりのインプレッションを書いて行きたいと思う。僕はカメラマンなので製品を評価するときは製品の写真撮影をしながら、開発担当者の意思を読み取る形で文章を考える。いわば、開発者との対話を楽しむ感覚だ。

その手があったか!という驚きの作り込み

 2つのG-SHOCKを撮影台にセットする前に、箱から取り出したときにすでに驚きがあった。MTG-B1000Dが、異様に軽いのだ。実測してみると180グラム。GMW-B5000が見た目通りの165グラムだから、二回りも大きいB1000Dとの差がわずか15グラムしかない。これはどういうことなのか。ベルトの裏側を見て理解した。全面に樹脂素材が張られているのだ。

バンド裏は全面にファインレジンのパネルが。軽量化と耐震動に貢献している
ファインレジンは腕に巻くと一部だけチラリと見える。これがデザインのポイントになっている

 これはファインレジンという樹脂で、軽くてしかも硬くて、しなやかさもあるという理想的な素材なのだそうだ。普通、金属を軽く作る場合、考えられるのはアルミかチタンだ。アルミは強度に問題がある。しかしチタン素材は金属アレルギーの人にも大丈夫ということで、メガネのフレームや腕時計にもよく使われている素材だ。

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