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前例ない“Pepperの接客” はま寿司のキーマンは「新規プロジェクト」で社長をどう説得したかこれからのAIの話をしよう(接客ロボット編)(2/4 ページ)

» 2018年12月11日 07時00分 公開
[松本健太郎ITmedia]

「Pepperありきではなかった」 プロジェクトの始まり

はま寿司 Pepper導入の立役者である、はま寿司(東京都港区)店舗管理部の池ノ上達也さん(次長)

 まず、Pepper導入のキッカケについてです。もしかして、偉い人のトップダウンで無理やり導入したという“よくある風景”なのでしょうか。池ノ上さんは笑顔で「それはないですね」と否定し、「これまでも店内の自動化についてはずっと考えてきましたが、特にお客さまのご案内に時間が掛かってしまうことを課題に感じていました」と話します。

 店舗改善業務を担当していた池ノ上さんは、店のレイアウトから厨房の機器に至るまで、さまざまな箇所の改善を検討していました。中でも、来店客の案内が滞ってしまうことは常に悩みの種でした。読者の中にも、行列ができる回転寿司チェーンで何十分も待った経験がある人もいるでしょう。

 「店舗の従業員は、会計、テークアウトの注文、商品の提供、お客さまに呼ばれたときの個別対応など、さまざまな業務があります。それぞれの業務が片手間になってしまったり、お客さまのご案内が遅れてしまったりすると、クレームにつながってしまう。ご案内の自動化についてはずっと考えていて、Pepper導入を検討したのはその3〜4カ月後くらい」(池ノ上さん)

 “Pepperありき”ではなく、業務改善の一環としての「受付・案内の機械化」から始まった今回のプロジェクト。最初はPepper以外のロボットも検討していたそうです。

 「例えば、発券機にキャラクターっぽい被せモノをして、しゃべるようにしても良かったなと。でも小さいお子さんも来るので、せっかくロボットで接客するなら動きが欲しいですよね。そこで当時ブームでもあったPepperにしようと決めました」

 発券機をしゃべらせるだけでは、お客さんとのコミュニケーションとして不十分です。そこでしゃべって動けるヒト型ロボットのPepper導入を決断した池ノ上さんですが、他の社員はどんな反応をしたのでしょうか。

 池ノ上さんは「社内でこの話をしたら、99%は『えっ?』というリアクション。『お客さまの案内をロボットにできるのか』『ソフトバンクみたいな大きな会社と一緒にプロジェクトを進められるのか』など、社内からはいろいろな疑問の声が上がりました」と当時を振り返ります。

 それでも、池ノ上さんは既に頭の中でPepperがはま寿司で活躍するイメージを思い描いていました。

「本当にできるのか?」 すぐにデモ機作り、社長を説得

 「自分の中では、ご案内を自動化するイメージは既にあったので、簡単なラフ案を作って早速ソフトバンクと打ち合わせしました。その後、すぐに『これは開発できます』と返事が来たので、そのままデモ機を作ることになったんです」

 ロボットによる接客について、イメージが付いていたのは池ノ上さん含む一握りの人のみ。「よく分からないからやめておけ」と上層部からストップがかかっても不思議ではありません。具体的な想像ができていなかった“99%の人たち”を説得するため、いち早く試作機を作ることは重要でした。

 池ノ上さんは「紙ベースでいくら説明しても具体的に動いているイメージが伝わらないので、とりあえず作ってみて実験しようと説いて回りました」と話します。また、プロジェクトの途中で社長が変わり、あらためてトップに説明する必要も出てきました。

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