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チケット購入アクセス「9割がbot」→“殲滅”へ イープラスの激闘を振り返る迷惑bot事件簿(3/3 ページ)

» 2018年12月27日 08時00分 公開
[中西一博ITmedia]
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 この法律での「興行」とは、日本国内で行われる、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊などの芸術、芸能またはスポーツを指す。この法律では、特定の日時や場所に加え、入場資格者か座席が指定され、不正転売の禁止が明記されるなどの条件を満たしたチケット(電子チケットを含む)「特定興行入場券」を、その興行主の事前の同意なく、販売価格を超える値で業として(※)転売することなどを禁止している。こうした条件を満たさないチケットは対象外となる。

(※)社会通念上、事業の遂行とみられる程度に行為を継続反復して行うこと。

 あくまで筆者個人の印象だが、各分野の専門家によって相当吟味された法案だと感じる。例えば、全ての興行チケットが本人確認必須になってしまっても困るだろう。「友達から都合が悪くて行けなくなったライブのチケットをもらったんだけど、今度の日曜に一緒に行かない?」というドラマで見るようなせりふも過去のものになってしまう。しかしこの法律の内容なら、興行主やプレイガイドは、チケットが持つ本来の利便性を必要以上に損なうことなく、法律が定める条件に従うことで高額転売が懸念される特定の人気公演のチケットを規制法の対象にすることができる。

 他方で、この法律の施行後でも、オークションサイトの自主規制の抜け道として用いられてきた策や、個人間の取引に模すなどの策を使って、高額転売を試みる人間がいずれ出てくるだろう。そこで期待されているのが、bot対策システムというわけだ。

 このような違反行為のいわば“入口”である、悪質な買い占め行為をbot対策システムで検知すれば、転売目的で不正な仕入れを行う業者の行為を規制し、後の立件の材料として記録する使い方も考えられる。さらにこの法律によって、想定される一連の違反行為の“出口”となる、特定興行入場券の不正転売を押さえることもできるようになった。チケットの適正な流通の確保では、この入口・出口での両輪の対策を回す取り組みが実質的な効果を発揮していくことになるだろう。

 幸い、イープラスのbot対策の発表をきっかけに、興行チケットを扱う多くの事業者が最新のbot対策の検討を開始している。来年以降さらに業界でのさまざまな対策が進むことを期待しよう。

 次回は、botを用いたフラウド(詐欺的行為)の実態などを取り上げる予定だ。

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