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過酷なアニメ制作の現場、AIで救えるか 「動画マン」の作業を自動化、DeNAの挑戦(1/2 ページ)

» 2019年02月07日 14時16分 公開
[村上万純ITmedia]
アニメ ディー・エヌ・エー(DeNA)AIシステム部の李天キさん

 「労働環境が過酷すぎる」「時間も人もお金も足りない」――日本のアニメ制作現場では、アニメーターの低賃金労働や法定労働時間の超過といった問題が指摘されている。こうした状況を、近年進化が著しいAI(人工知能)技術で改善できないか。ディー・エヌ・エー(DeNA)AIシステム部の李天キ(王に奇)さんと濱田晃一さんが、2月6日に開催された技術者向けイベント「DeNA TechCon 2019」で、最新技術を用いた事例を紹介した。

 アニメの制作現場でも特に過酷とされるのが「動画マン」と呼ばれる仕事だ。動画マンは、滑らかなアニメーションになるように、原画と原画の間を埋める絵(中割り)を描く人のこと。

 私たちが良く目にする「30分間のテレビアニメ」の場合、1話当たり3500〜4000枚の中割りを描く必要があるという。1枚を完成させるのに数時間かかることもあるが、給与はほとんどの場合1枚いくらの歩合制。時間をかければかけるほどアニメーターの時給は下がっていく。

アニメ アニメの中割りをAIで生成

「構造変化が大きい」 アニメの難しさ

 李さんは、与えられた原画のデータを基に、原画と原画の間を埋める中割りの画像を自動生成できないかと考えた。実写動画の中間フレームを自動補完する「Frame Interpolation」という技術は既に存在する。ニューラルネットワークが、2枚の画像間におけるピクセルの移動量を表したベクトルマップ「Optical Flow」を算出し、中間フレームを合成するというものだ。

アニメ 「Frame Interpolation」の技術

 いまの技術では、フレームレートが30〜60fpsの動画を入力すると、中間フレームが補完された240〜480fpsのより滑らかな動画を生成できるという。

 しかし、この手法をそのまま「アニメの中割り」に適用するのは難しい。実写動画とアニメではフレームレートが違いすぎるからだ。フレームレートが低いアニメは「画像間の構造変化が大きい」。

アニメ アニメの中割りにはそのまま適用できない

 李さんは「実写動画に比べ、アニメはフレームレートが低い。またイラストは実写に比べて色が単調でピクセルの対応点を特定しにくく、Optical Flowの計算が困難だ」と説明する。

「構造情報」を使って滑らかなアニメーションを作成

 そこでDeNAは「構造的生成学習」(SPGANs、Structure-consistent Prediction GANs)という手法を提案する。

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