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Googleのゲームストリーミング「STADIA」は、ハードメーカーを“喰らう”のか

» 2019年03月20日 18時17分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 米Googleが3月19日(現地時間)に発表したゲームストリーミングサービス「STADIA」が、ゲームファン、ゲーム開発者に衝撃を与えている。“No boxes. No downloads.”(ハード不要、ダウンロード不要)――2019年内に北米と欧州で提供を始めるSTADIAは、クラウド上の4Kゲームをプレイでき、同時にYouTubeでゲーム実況の配信が可能という。ネット上では「ハードメーカーが影響を受けるのではないか」といった声も出ている。

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 STADIAは、データセンター側でゲームの画像処理を行うため、ユーザーは特定のハードを必要とせず、スマートフォン、PC、テレビなど“ネットにつながった画面”さえあれば、デバイスを切り替えながら遊べるのが特徴だ。

 米AMDと共同開発したGPUの性能も売りだ。処理能力は10.7TFLOPSで、ソニーのPS4 Pro(4.2TFLOPS)、MicrosoftのXbox One X(6.0TFLOPS)を足し合わせても上回るとアピールする。ここでもハードへの依存をなくし、クラウド上で処理するというメリットを生かす。

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 既存のコントローラーを使って遊べるが、独自のコントローラーも用意した。コントローラーは、YouTube上でゲーム実況をすぐに配信できる「キャプチャーボタン」を搭載している。ゲーム開発者がYouTubeのゲーム紹介動画上に「Play Now」ボタンを設置し、ユーザーがクリックするだけでプレイ可能にする――という仕組みも用意する。

 ゲーム実況を巡っては、任天堂がプレイ動画の投稿を認めるガイドラインを公表するなど、メーカーが認める動きが広がっている。ハードメーカーも、ゲーム実況が新たなファン獲得につながるといった“うま味”は理解しているはずだ。

 一方、ゲームファンの間ではレイテンシ(遅延)を不安視する声も出ている。STADIAでゲームをプレイしたMercari R4Dの中地功貴さん(xRエンジニア、ゲーム開発者)は、自身のTwitterで「体感100ms(ミリ秒︰1000分の1秒)以下」と投稿。だが、プレイ動画を見たゲームファンの間では、FPS(First Person shooter)や格闘ゲームでは「耐えられないレベル」とも評されている。Googleが、どこまで遅延を抑えられるかは未知数だ。

 STADIAの発表を受け、20日の東京株式市場では、任天堂が前日終値比1010円安(-3.21%)の3万480円、ソニーが173円安(-3.38%)の4951円に下落した。普及するスマートフォンゲームとの“共存”が課題ともいわれるハード市場だが、STADIAに“喰われる”のか、それとも――。

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