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ラーメン屋・幸楽苑、店長の報告業務をクラウドにシフト 「FAXに依存」「伝言ゲーム状態」から脱却へ(1/2 ページ)

» 2019年06月04日 16時36分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 ラーメンチェーン「幸楽苑」などを展開する幸楽苑ホールディングス(HD)は6月4日、クラウド上で写真付き報告書を作成・共有できるアプリ「cyzen」(サイゼン)を同チェーン全店(508店舗)に導入したと発表した。店舗の運営状況を本部に報告する際、店長が現場をスマートフォンで撮影し、コメントを添えて送信するオペレーションを採用。紙とFAXに頼った“報連相”からの脱却を目指す。

 具体的には(1)メニューの差し替え・POPの配置・のぼり旗の設置といった施策の報告、(2)衛生管理状況や駐車場の混雑状況の報告、(3)開店前・閉店後のチェックの完了報告――などを行う予定。在庫のデータもクラウド上に集約し、業務を効率化する方針だ。

 数値目標などは未定だが、労働時間とコストの削減が狙い。1年後をめどに電話機やFAXなどを廃し、店舗と本部間の連絡手段をスマホに集約することで、機器の維持費や用紙代などを削減する計画もある。

 幸楽苑が導入するcyzenは、ベンダーのレッドフォックス(東京都千代田区)が開発・提供するSaaS。Amazon Web Services(AWS)がベースで、チャット機能、位置情報にひも付いた予定管理機能、業務報告書の作成・共有機能などを持つ。

photo 幸楽苑がSaaS導入を発表(=公式Webサイトより)

紙ベースの“報連相”で伝言ゲーム状態に

 幸楽苑は「店員→店長→エリアマネジャー→ディストリクトマネジャー→本部社員」という組織階層を採用している。これまで店内で報告事項が生じた場合は、店長がFAXなどでエリアマネジャーに報告し、エリアマネジャーがさらに上の役職に共有し……と、各社員が1つ上の役職者に報告する方式を採ってきた。

 飲食業界では一般的な体制だが、店長には複数の帳票を作成・送信し、紙ベースで保管する手間が発生。エリアマネジャーにも多くの店長の報告をとりまとめる負担が生じていた。報告が“伝言ゲーム”のようになり、上の階層に伝わる中でニュアンスが変わる弊害もあった。

photo cyzenの機能の一部(=公式Webサイトより)

15年前とほぼ同じ状況

 こうした状況を、昨年11月に社長に就いた新井田昇氏が問題視。「私が現場社員だった15年前と状況がほとんど変わっていない。外食チェーンの働き方にイノベーションを起こしたい」と考え、SaaSの導入を決めたという。

 「バックヤードに並んでいるファイルと書類も昔とほぼ同じ。これだけテクノロジーが進化したのに、マネジメントは何一つ変わっていなかった。社内に体制を変えようというマインドがなかったのが要因だ。この状況を何とか改善するために、(SaaSを)全店に取り入れることにした」(新井田社長)

 今後はクラウドを介し、店長が本部に報告書を直接送るため、エリアマネジャーの負担が軽くなる。そこで幸楽苑HDは、エリアマネジャーの人数を削減して注力事業に再配置することで、さらなる業績向上に努めていくという。

photo 幸楽苑HDの新井田昇社長(=左)、レッドフォックスの別所宏恭社長(=右)
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