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“選択と集中”進めるドワンゴ、「電ファミニコゲーマー」手放す 編集長の会社などに事業移管

» 2019年07月01日 15時08分 公開
[ITmedia]

 ドワンゴは7月1日、ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」(電ファミ)の運営事業を他社に移管した。メディア事業は平信一編集長が社長を務める新会社「マレ」、攻略情報の配信プラットフォーム「電ファミWiki」事業はKADOKAWA傘下のGzブレインが引き継ぎ、運営を続ける。

 電ファミは2016年2月に創刊。当初はゲーム関連ニュースのキュレーションサイトという位置付けで、「niconico」「電撃」「ファミ通」「4Gamer」から情報提供を受けていた。サイト名もそれら4メディアにちなんでいる。

photo ゲーム情報サイト「電ファミニコゲーマー」

 その後は16年8月に、旧運営会社のリインフォース(ドワンゴ、KADOKAWA、ハーツユナイテッドグループの共同出資)が、ドワンゴのニュース事業部門に統合。メディア事業では近年、著名クリエイターをゲストに迎えた「ゲームの企画書」など独自の“深堀り記事”を掲載し、コアなファンを獲得していた。

 だが、平編集長が17年に「正直な話をすると、このサイトの確固たるビジネスモデルはまだない」「既存の商業Webメディアのように、広告を掲載していくという取り組みを考えないわけではないが、それによるデメリットや限界が少なからずある」との見解を同サイト上で発信するなど、収益化と媒体方針の両立に苦戦する様子をうかがわせていた。

 一方、動画サービス「niconico」有料会員の減少が続くドワンゴは現在、収益体質の改善に向けて不採算事業の見直しに注力。19年に入ってから、AIの研究を行う「ドワンゴ人工知能研究所」、ゲームアプリ「テクテクテクテク」などを矢継ぎ早に終了している。

 発表を受け、Twitterでは「ドワンゴは電ファミも手放すのか」「ドワンゴのWebサービスのマネタイズはどうなのか」「面白い記事が多かったのに残念」といった声も上がっている。

電ファミの今後は……オンラインサロンなどで資金調達

 メディア事業を受け継ぐマレは今後、読者向けの有料オンラインサロンを運営する他、スポンサー企業を募って活動資金を得る方針。記事は従来通り無料で公開するが、サロン会員には限定コンテンツを配信したり、オンライン編集会議への参加を認めたりといった特典を提供する。

 サロン会員の料金体系は、「トライアル」(月額980円)、「スタンダード」(月額2980円)、「プレミアム」(月額6980円)の3つ。金額に応じて、スポンサーとしてサイト上に氏名を掲出する、オンライン編集会議への参加を認める、飲み会などのイベントに招く――といったリターンを付与する。

 活動資金が1カ月当たり100万円に達した場合は、ゲームクリエイターにヒット作の開発時の裏話を聞く連載「ゲームの企画書」を継続する。200万円に届いた場合は、若手クリエイターにインタビューする連載「新世代に訊(き)く」を続ける。それ以降も、集まった資金額によって掲載するコンテンツを決めるという。

photo 「電ファミニコゲーマー」による発表

 体制変更に伴い、業界の著名人がアドバイザーとして参加。元「週刊少年ジャンプ」編集長で「ドラゴンボール」生みの親として知られる鳥嶋和彦氏、KADOKAWA・DOWANGO(当時)初代社長の佐藤辰男氏、元バンダイナムコゲームス(当時)社長の鵜之澤伸氏が、サロン会員向けコンテンツの企画などに協力する。

 平編集長は「引き続き新しいゲームメディアの形を模索しながら、電ファミニコゲーマーがよりよい形で存続できるよう努力していきたい」「この状況を逆に好機と捉えて、これまでにできなかった取り組みに挑戦し、全く新しいメディアの形を模索してみたい」とコメントしている。

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