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音楽サブスクの2トップ、SpotifyとApple Musicのレコメンドシステムはどう違う?(1/3 ページ)

» 2020年04月02日 06時40分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

 欧米に続き、日本でもサブスクリプションサービスが、音楽ビジネスの中で一定の地位を築き始めている。それは、サザンオールスターズ、中島みゆき、井上陽水、松任谷(荒井)由実といった大物アーティストが続々と音楽サブスクに参入していることでもうかがい知れる。

 リスナーの立場からすると、幸せな時代の到来だ。一方、楽曲を提供するレーベルにとっても、サブスクは、キャッシュフローの安定化をもたらしてくれる。わずか2000曲強の楽曲を提供しているにすぎない筆者のレーベルにおいてすら、サブスクからの売上は、多少の凸凹は見られるものの、比較的安定的に推移している。過去の音源も含め、数百万曲、数千万曲を取り扱っている大手レーベルであれば、サブスクからのキャッシュフローの安定化効果は、かなりのものになるのではないだろうか。

 ただ、手放しで喜べないポイントもある。レーベル側からすると、自分たちの音楽がどのような形でピックアップされ、再生リストに登場しているのかがブラックボックスと化しており、どうにも釈然としない部分があるのだ。

 特に、筆者が運営するような弱小レーベルの場合は、プラットフォームと直接コンタクトすることはできず、アグリゲーターと呼ばれる一種の取次代理店を通じての提供となるので、情報として降りてくるのは「何がいつ何回ストリーミング再生された」という売上結果としてのデータだけだ。ただ、プラットフォームと直接やりとりを行っている大手レーベルが、それ以上のデータをプラットフォーム側と共有しているのかどうかは、部外者である筆者は知る由もない。

iTunes Storeでの売上実績がApple Musicでの再生数を決める?

 音楽サブスクの売上データにおいて興味深いデータがある。下図は、筆者のレーベルの過去24カ月における四半期ごとのプラットフォーム別の売上グラフだ。驚いたことに、Apple MusicとiTunes Storeが突出している。その一方でグローバル市場において、Apple Musicとサブスクを二分するSpotifyの売上が異様に少ないのが分かる。この非対称性の要因はどこにあるのか、あくまでも筆者の推測の範囲であるが、以下に考察してみた。

photo 2018年と19年の四半期ごとの各プラットフォームの売上比較グラフ。Apple MusicとiTunes Storeが突出している

 考察の前に、まず、ご留意いただきたいことがある。前述の通り、筆者のレーベルでは、2000曲強の楽曲を各プラットフォーム共通に配信している。大手レーベルが数百万曲、数千万曲を取り扱っているのと比較すると、誤差の範囲内ともいえるカタログ数である。従って、上記のグラフや以下の考察がサブスク全体を示す普遍的な話ではないことは忘れないでいただきたい。

 それにしても、世界を二分するApple MusicとSpotifyで、なぜこれだけの開きが発生するのか。まず考えられるのが、両プラットフォーム間でのレコメンドやプレイリストでの選曲の仕組みの違いであろう。Apple Musicの場合、iTunes Store(iTunes Match含む)での販売実績が、レコメンドに大きく影響するとにらんでいる。

 筆者のレーベルでは、クラシック、ワールドミュージック系、宮崎アニメ楽曲のカバーといった、瞬発力には乏しいが、長い時間軸の中で、比較的堅実に聴かれる楽曲を中心に配信している。そのような中の一部に、iTunes Storeのクラシックやワールドのチャートにランクインするアルバムがある。実はそのようなアルバムに収録された楽曲は、Apple Musicのストリーミング数も伸びている。iTunes Storeでの販売実績がApple Musicのレコメンドやプレイリスト作成に影響する仕組みになっているのだ。

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