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ファーウェイは“第3の道”で成功するか 「Tizen」「Firefox OS」……過去の失敗から可能性を探る(1/2 ページ)

» 2020年07月03日 17時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 米国の制裁によってスマートフォンでGMS(Google Mobile Service)の利用ができなくなった中国ファーウェイが、“第3の道”を模索している。

 もともと同社は、独自ストアの「App Gallery」を端末に内蔵し、ユーザーにアプリをお勧めしていたが、この運用を本格化。GoogleやAppleと同様、アプリ開発者を自身で開拓している。GMSにはGoogleがアプリ開発者向けに用意した各種サービスやAPIも含まれているが、これも自前のものに置き換える方針だ。App Galleryや各種APIをパッケージ化したものを、「HMS(Huawei Mobile Services)」と呼ぶ。そんな第3の道は、本当に成功するのか。可能性を考察した。

“第3の道”を歩み始めたファーウェイ。その勝算を探った。中央がファーウェイのApp Gallery

“第3の道”を歩み始めたファーウェイ、過去の失敗は生かせるか

 GMSの採用を断念せざるをえなくなったファーウェイは、日本でも、4月に発売された「Mate 30 Pro 5G」から、HMS端末を本格的に投入するようになった。6月には、カメラ機能に定評のあるPシリーズのフラグシップモデル「P40 Pro 5G」に加え、同社の躍進を支えてきたミドルレンジの「P40 lite 5G」「P40 lite E」も投入。いずれのモデルも、Androidでありながら一般的なAndroidとは異なる、HMS対応モデルだ。

4月発売の新モデルから、HMSの搭載が始まった。写真の最新モデルのP40 Pro 5GもHMS対応だ

 端末の拡充とともに、日本でも、アプリ開発者の開拓に本腰を入れ始めた。グローバルで実施している、10億ドルを投じた「シャイニングスタープログラム」を日本でも展開するのに加え、国内の開発者をサポートする部門も設立。P40 Pro 5Gの発表会では、ナビゲーションアプリの「NAVITIME」や、映像サービスの「U-NEXT」などが紹介され、それぞれの幹部が期待のコメントを寄せた。日本での普及率が高く、デファクトスタンダードのアプリになっている「LINE」も、すでにHMS版がApp Galleryに用意されている。

開発者との接点を強化しており、徐々に日本発のアプリも増えてきた

 “第3の道”を歩み始めたファーウェイだが、過去にもiOSやAndroidに対抗する動きはあった。韓国Samsung ElectronicsやNTTドコモが中心となって開発が進められた「Tizen」や、米Mozilla Foundationが展開した「Firefox OS」、米Microsoftの「Windows 10 Mobile」などがそれに当たる。Tizenを除く2つのプラットフォームを採用した端末は日本でも発売されたが、鳴かず飛ばずのうちに、サービス提供を終了してしまった。

 原因はさまざまだが、立ち上げ当初に十分な数のアプリがなく、ユーザー数が伸び悩み、そのような状況を見てアプリ開発者が参画しづらい悪循環が起きていたことは共通している。端末の売れ行きやユーザーの数と、アプリの充実度は鶏が先か卵が先かの関係だが、当時、すでに十分なシェアを持っていたiOSやAndroidに、規模の経済で対抗するのはハードルが高い。これまでの対抗勢力は、残念ながらその壁を乗り越えられなかったというわけだ。

“第3のOS”や“第3のプラットフォーム”を目指す動きは過去にもあった。写真はKDDIが販売したFirefox OS搭載端末の「Fx0」

補完方法はあるが、生活に密着したアプリがまだまだ足りないApp Gallery

 死屍累々だった過去の“第3のプラットフォーム”に対し、HMSを搭載したファーウェイのスマートフォンは、実際にどこまで使えるのか。筆者自身もP40 lite 5Gを購入し、App Galleryを使ってみた。結論から言うと、まだまだメイン端末として使うには厳しいというのが率直な印象だ。

P40 lite 5Gを購入し、実際にApp Galleryを使ってみた

 例えば、LINEはあるため、友人や家族などと連絡を取ることはできる。Googleのサービスには非対応だが、「Googleマップ」はWebで代替できるし、「Gmail」もメーラーで読み込めば送受信することもできる。「Facebook」はアプリもあり、GMS搭載Androidと同じように利用でき、「Twitter」もWeb経由で閲覧や投稿が可能だ。また、一部のアプリは、Amazonが用意する「Amazonアプリストア」からダウンロードでき、App Galleryの補完になる。

SNSやメッセンジャーなどは意外と充実しており、連絡には困らない。画面はHMS版LINE
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