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転ばぬ先の"しっぽ”型ロボット 東大が技術開発Innovative Tech

» 2021年04月06日 07時11分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学の研究チームが開発した「Dynamic Assistance for Human Balancing with Inertia of a Wearable Robotic Appendage」(PDFへのリンク)は、人間のバランス能力を補助する尻尾(しっぽ)型ウェアラブルロボットだ。尻尾による慣性力を使い、バランスを崩した時の転倒を防ぐ。

photo 尻尾のようなロボットは人間のバランスをサポートする

 人間は転倒しないために、足の配置調整や上半身の動きなどで姿勢を安定させ、つまずいた際には腕を振った時の慣性力を使い全身の姿勢を制御しバランスを保つ。動物でも、尻尾の慣性力を利用した同様のアプローチが観察される。

 尻尾型ロボットを人間の背中に装着しバランス能力を補助するウェアラブルロボットのプロトタイプはパックパック型で、振り子のように軸を中心に左右へ回転する1自由度の尻尾を持つ。その反力とトルクを利用し、装着者の横方向のバランス維持を向上させ、緊急時の転倒を防止する。

 地面や壁に直接接触し支えてバランスを維持するのではなく、周囲に触れずにサポートする点が特徴だ。

photo プロトタイプの構造

 外部から被験者に衝撃を与え(左からワイヤーで腰を引っ張る)、バランスを崩した際のサポートがどれだけできるかを実験したところ、サポートなしの場合は姿勢が崩れたのに対し、尻尾型ロボットを装着した場合にはバランスが保たれ、元の姿勢のまま維持できた。これによりバランス能力の補助としての有効性が認められたとしている。

photo 左から引っ張られた際に尻尾型ロボットが作動しバランスを保つ様子(上段)尻尾型ロボットのサポートなしに左から引っ張られた際の動き(下段)

 今回は回転軸を中心とした左右の動作にとどまったが、今後は自由度を増やし高度な制御方法を検討したいという。

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