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「メタバース×ブロックチェーン」の未来(後編) Thirdverseの國光CEOと話す、VRのその先(1/4 ページ)

» 2021年08月26日 10時19分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 前回に続き、Thirdverseの國光宏尚CEOへのインタビューをお届けする。

 前編では同社がVRゲームでの成功の先で目指したいメタバースの形について話を聞いたが、ここからはそれを踏まえ、「メタバースとブロックチェーンを組み合わせた時に生まれる可能性」について話題が広がった。

 ご留意いただきたいのは、ここからの話が「数年以内で実現することはない」ということ。デバイス技術だけでなくサービスや法制度の在り方など、多数の解決すべき課題があり、その先に「あるかもしれない」世界の話である。

 メタバースは急速に注目を集め始めているが、アバターを使ったSNSより先にある可能性はまだ開拓が始まったばかり。その中でどのようことがありうるかを語ってもらい、その上で「Thirdverseの勝ち筋と未来予測」を聞いた。

 前編ではメタバースのクロスプラットフォーム化においてはNFT(Non-Fungible Token)が重要になるという國光氏の回答で終わった。後編はその意味を解説してもらうところからスタートする。

デジタルでの資産性を生み出す「個数限定」

――ネット上の世界の連合体であるメタバースにとって、NFTが絡む「メタバース経済」が大きな意味をもつ、というのはどういうことですか?

國光氏 ブロックチェーン、すなわちNFTの本質は、デジタルデータの供給量を限定できることです。

photo Thirdverseの國光宏尚CEO

 例えばあるゲームのアイテムを「10個限定」として、それをパブリックなチェーン上に公開すれば、誰でも確認できるようになるわけです。

 もちろん、今のゲームでも「個数限定」というアイテムは作れます。でも、本当にいくつあるかは分からないですよね。もちろん、サービス側は約束を守っているでしょうが、それは「不確かなものだ」と言われればそうかもしれない。

 しかし、ブロックチェーンによって、誰もが確認できる形で量を限定できるようになれば話は変わります。デジタルデータにバリューが生まれるということ、すなわち「資産性をもつ」ということに他なりません。これはすごく大きいことなのです。

 インターネット上で、デジタルデータはずっと「経済的価値」を持てなかったですよね。コピーにかかるコストがゼロでしたから。そのため、インターネットが一般化して20年以上が経過しているけれど、結局コンシューマービジネスで大きな収益につながるのは広告かコマースという、「リアルとの接点になるところ」だけでした。

 しかし、供給量が限定できるとなれば話は別です。例えばゲームの中で家を建てれば「不動産」になり得るし、そこに付随して建築や内装、装備などを作るビジネスも生まれてきます。

 私はそれほど遠くない未来に、「ゲーム内でコンテンツをクリエイトして親より稼ぐ子ども」が大勢出てくると思ってるんですね。

 今はゲームをずっとしていると怒られるけれど、これが野球やサッカー、勉強なら怒られない。ある意味で不公平だと思うんですが、稼げる時代になれば、ゲームばっかりやることが正当化されるようになるかもしれない(笑)

 あれだけ「どうぶつの森」でいろいろなものを作る人がいて、世界的にも「Roblox」が大ヒットしているわけですよね。ゲームの中で作ったものに金銭的な価値が生まれてくると、ゲームの中でお金を稼ぐ人の数が爆発的に増えていくことになります。エンジニアでなくてもゲームから価値を産めるということになるわけで、ゲームでお金を稼ぐことが「民主化されていく」といってもいいかもしれません。

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