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VRゴーグル着けてロードバイクで走り抜けるGoogleストリートビューの風景 しまなみ海道からアビーロードまでCloseBox(1/5 ページ)

» 2021年09月14日 08時00分 公開
[松尾公也ITmedia]

 前からやってみたいと思っていた夢がある。バーチャルサイクリングでどこでも自由に走り回るというものだ。室内で自転車を漕いで、画面には3D空間に入り込んだ自分と自転車が進んでいく仕組みの「Zwift」(ズイフト)は、ある程度それを実現してくれている。パリ、ロンドン、ニューヨークといった観光名所を家にいながら走ることができる。

 しかし、「どこでも」「自由に」ではない。

 Zwiftの中で走れるのは、Zwiftの中に3Dで構築された仮想的なパリ・ロンドンで、走れるのも特定のコースだけ。例えばロンドンにあるビートルズの聖地、アビーロードスタジオの世界一有名な横断歩道を横切るといったことはできない。

 アビーロードの横断歩道は、定点カメラやGoogleストリートビューによって、以前よりもだいぶ身近なものになったが、仮想自転車の旅先としてはまだ遠いものだ。いや、遠いものだった。

 Googleストリートビューで撮影された場所ならどこでも走れるという仮想自転車サービスが始まっていたのである。VRゴーグルを着けて360度どこでも見渡せる“VRサイクリング”という形で。

Oculus QuestをかぶってVRサイクリング

 サービスの名は「VZfit」(ブイジーフィット)。米マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置くスタートアップVirZoomが運営している。もともとは、ジム用の専用システムの開発を行っていたのだが、VRにシフトして仮想サイクリングシステムを構築。2019年にサービスを開始した。現在では「Oculus Quest」と「Oculus Quest 2」に対応している。

photo VZfit

 筆者はVZfitがOculusのサブスクリプションサービスに対応したのをきっかけに初代Oculus Questで始めた。譲ってもらったダイレクトドライブ方式のローラー台と古いロードバイクを組み合わせ、仮想サイクリングサービスの一番人気「Zwift」を始めたのは4月のことだが、並行してVZfitもやってみようと考えたのだ。サービスは月額990円(税込)。Zwiftほど高くはないが、決して安い投資ではない。

 しかし、これがうまくいかない。Oculus Questのゴーグルをかぶってローラー台のセンサーをVZfitに接続し、ロードバイクを漕ぐのだが、前に進まない。進まないどころか逆走してしまう。Zwiftの方は体重が14kg減るくらい毎日走っているのだが、VZfitは4カ月放置したまま。解約するかと思案しながらダラダラ先延ばしにしていた。

 先進的なVRグループウェア「Horizon Workrooms」のためにOculus Quest 2を買ったのでVZfitのことを思い出して再挑戦してみたのだが、やはり自転車とうまく連動しない。

 しかし今度は諦めず、しっかり原因を追求しようと対応センサー、バイクシステムの対応表をチェックしてみた。

 対応しているセンサーやバイクシステムはかなり少ないのだが、買える値段のものもある。このセンサーを室内で使っているロードバイクに追加で取り付ければいいのか、と購入することにした。

photo VZfit対応製品

 最も互換性が高いとお勧めされているのは「Magene S3+」という中国製のセンサー。日本でも2000円から4000円くらいで買える。ケイデンス(回転数)とスピードと両方に対応しているが、ここではケイデンスモードにして、ロードバイクのクランクに装着した。

 VZfitを起動すると、システムがこのセンサーを見つけ、仮想空間内の自転車はちゃんと前に進んでくれた。ついにVRロードバイクの誕生である。

 前置きが長くなってしまったが、VZfitがどのような仕組みになっているのかを紹介しよう。

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