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「太陽の自転周期、緯度ごとでなぜ違う」の謎、スパコン「富岳」で解明 世界最大、解像度54億ドットで太陽を再現

» 2021年09月14日 15時08分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 千葉大学と名古屋大学の研究チームは9月14日、スーパーコンピュータ「富岳」を使い、太陽の自転周期が緯度ごとに異なる理由を解明したと発表した。富岳を使い、太陽の磁場や熱流を、54億ドットの解像度でコンピュータ上でシミュレーションした結果、現象の原因が分かったという。

富岳で再現した太陽(千葉大学提供)

 地球はどの緯度でも同じ1日の周期で自転するが、太陽は緯度ごとに違う周期で自転している。赤道付近では25日程度、北極と南極といった「極地方」では30日程度の周期で、赤道付近の方が自転速度が速い。この運動は「差動回転」と呼ばれ、太陽黒点の形成と太陽の周期活動の重要な役割を果たすと考えられているが、これまで発生の原因が分かっておらず、「熱対流の難問」として太陽物理学では長年の謎だったという。

 過去にはスパコン「京」を使い、同様の実験を約1億ドットの解像度で実施。しかし計算能力が足りず、極地方が赤道付近より速く自転する結果になり、正確なシミュレーションができていなかったという。

 今回、研究チームでは富岳を使い、太陽のシミュレーションを試みたところ、実際の太陽と同じく赤道付近が速く回転する差動回転の再現に成功。その結果、これまで熱流のエネルギーより小さいと考えられていた太陽内部の磁場のエネルギーが、実際は熱流エネルギーの最大2倍以上あることが判明。これにより、磁場のエネルギーが差動回転に影響を及ぼしていることが分かったという。

スーパーコンピュータ「富岳」

 研究チームでは今後も富岳を使った実験を継続。今回得られたデータを活用し、太陽物理学最大の謎といわれる、太陽黒点数が約11年周期で変動する現象「太陽活動11年周期」の解明を目指す。

 この研究成果は、英国の天文学雑誌「Nature Astronomy」に9月13日付で掲載された。

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