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ガラス張りヒトカラが中国でスクラップ化していく背景 暇つぶしとキャッシュレス決済の行方(1/2 ページ)

» 2021年10月20日 06時06分 公開
[山谷剛史ITmedia]

 中国のモールでよく見たガラス張りの無人カラオケボックス「ミニKTV」が撤去されるというニュースを最近よく聞く。

photo モールにあるミニKTV

 ネットではあるとされているけど行ってみるともうなくなっている……そんなことが目立っているそうだ。

 ミニKTVは「友唱M-bar」「minik」をはじめ数社からリリースされていて競合している。

 部屋の中にはディスプレイがあり、そのタッチパネルを操作して選曲する仕組み。支払いはキャッシュレスアプリで行う。

 1曲単位、または15分、30分の時間区切りで支払うことができ、支払うと、曲をスマートフォンアプリにダウンロードできる仕組み。モールなどに設置されており、気軽に入って利用できる娯楽として人気になるはずだった。

 衰退した1つの理由は新型コロナウイルスだ。中国がゼロコロナ政策を取る中、密な空間で声を出すミニKTVは受け入れられなかった。

 新聞晨報によれば、2020年のミニKTV全体の売上高は前年比62.8%減の5億1000万元(1元=17.3円)という。中国文化娯楽工業協会によると、2016年には1台当たりの売り上げは年間2万2000元だったのが、毎年微減傾向が続き、2018年には2万元、感染拡大で人々が触れ合えなくなった2020年には8600元まで下がった。

 ただ理由はそれだけではない。そもそももうかっていなかったのだ。

 調査会社の前瞻産業研究院が2021年9月に発表した中国カラオケ産業に関するレポートによれば、ミニKTVのコストは、1台購入で1万元台前半から2万元台後半程度。さらに版権費が年2400元、メンテナンス代・電気代が年2000〜5000元、土地使用台が年3万6000元、つまり購入費に加え毎年4万元以上かかるのに対し、収入は純粋な売り上げ3万6000元+広告収入しかない。つまりマイナスなのだ。

photo ミニKTVの設置台数(前瞻産業研究院)
photo ミニKTV企業の資金調達(前瞻産業研究院)
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