大阪の町工場が「自分の欲しかったSaaS」を作った クラウドインフラのサービス終了でも負けなかった理由

» 2021年10月21日 10時00分 公開
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 大阪府堺市に“ありえへん町工場”をモットーに金属加工業を手掛けるユニークな企業「日本ツクリダス」がある。同社の事業は、機械部品の製造とデザイン、コンサルティング、そして――SaaS開発だ。

 同社は2013年創業。クライアントから部品の設計図を預かり、6人の技師が旋盤・フライス加工を行っている。1階の工場には金属を削る音が響き渡っており、これだけなら至って普通の小さな町工場に見える。

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 しかし、2階のオフィスに上るとその様子はがらりと変わる。デザイナーがデスクでWebサイトやチラシ、名刺、ロゴを製作し、2人のソフトウェアエンジニアがシステム開発作業を行っているのだ。同社の強みは、町工場だからこそ分かる、製造業者のニーズに寄り添ったコンテンツ制作だ。

 そんな同社の主力商品が、製造業向け生産管理SaaS「エムネットくらうど」だ。同サービスは角野嘉一社長が日本ツクリダス設立当初から企画し、パートナー企業とともに作り上げた。デザイン事業と同様、こちらも町工場ならではの視点で“町工場に必要なもの”を詰め込んだサービスになっている。

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 「町工場として、ものづくり以外のことも支援する。それは理念というより、まわりから頼られるから。腹黒くいえば、そこは誰もいないブルーオーシャンだとも考えられる」(角野社長)

 15年にリリースしたエムネットくらうど(当時の名称は「M:net」)だが、18年にはサービス提供の基盤として使っていたクラウドインフラがサービスを終了するピンチに見舞われた。日本ツクリダスがこのピンチをチャンスに変えられたのは、クラウドインフラの切り替えに成功したからだ。そこには、同じく大阪に本社を構えるさくらインターネットの協力があった。

フロービジネス依存からの脱却を目指して

 日本ツクリダスはもともと、角野社長が父親の経営する会社から分離してできた機械部品の販売会社だった。次第に自ら金属加工を手掛けるようになり現在のような町工場になっていった。

 しかし角野社長はこの業態に不安を抱えていたという。いわゆる下請け事業であり、どうしても特定のクライアントに依存することが多い。創業当初は売り上げの大部分が1クライアントによるもので、その会社からのオーダーが無くなればすぐに収入が大きく減ってしまう恐れがあった。

 そこで角野社長はリスク分散の意味も込め、継続的に収入を得られるストックビジネスへの参入を企てた。

 そこで生み出されたのがエムネットくらうどだ。サービスの発想は「金属加工のプロセスを、金属加工を実際に行う者の視点からシステム化ができないか」という点にあった。

機能のヒントは日常に

 エムネットくらうどは、仕事の進み具合を可視化して管理するツールだ。管理画面を見れば「納期が遅れている仕事はないか」「今どの製造段階にあるのか」「どの仕事を優先すればいいか」といった情報が分かる。これにより、部品の紛失や納期の遅れを減らせる。

photo エムネットくらうどの操作画面

 分かりやすさを重視して「生産管理システム」と呼んでいるが、角野社長いわく、スケジュールや期限を管理できる「納期管理システム」に近いという。

 特長は、製造業ならではの、モノに着目したタスク管理ができることだ。まず、製造する部品の設計図に識別用のバーコードを付与し、システムへの作業登録を行う。次に、作業開始時と終了時に各担当者がバーコードを読み込ませることで、その設計図に、いつ、誰が、どこでどんな作業を行ったかを記録する。

photo 日本ツクリダスの角野嘉一社長

 「料理に例えると、ニンジン切る、ジャガイモ切る、焼く、水とルーを入れて煮込む、最後にカレーができるという一連の作業を、スケジュールとして一覧可能になるイメージ。モノが今どこにあり、いつまでに必要かを管理できる」(角野社長)

 これは角野社長自身が欲しかったツールでもある。角野社長は日本ツクリダスの創業以前、当時勤めていた職場で、今どこでどの作業が行われているかを把握するため、Excelを使って納期管理を行っていた。しかし、いちいちデータを手作業で入力しなければならない上、情報を探すのも簡単ではなく、大きな手間がかかっていた。

 「納期管理システムを探したが、既存のサービスは高機能すぎて町工場には過剰。同じことを感じている人が他にもいるはずで、ストックビジネスにもなるので自分でほしいツールを作ることにした。作ってみたら、これを売りたくなる。大阪の商人的発想と言われれば、そうなのかもしれない。アイデアは大事だし、ビジネスは大好きなので」(角野社長)

 しかし角野社長はソフトウェアエンジニアではない。そこでパートナー企業のシステム開発会社と協力してエムネットくらうどの開発に乗り出した。仕様についてぶつかり合いながらも14年には大まかな形ができ、15年にリリース。最初はスロースタートであったものの、ネットでの集客が功を奏し、徐々に浸透し始めた。

パートナーが事業撤退、クラウドインフラもサービス終了

 ところが18年、一緒にシステムを開発してきたパートナー企業から、エンジニアの退職などで開発の継続が困難となったため、業務を撤退すると伝えられる。新たにシステム開発会社を見つけ後任を据えたものの、今度はエムネットくらうどの提供基盤であるクラウドインフラサービスが終了を告知してきた。そのクラウドインフラは、最初のパートナー企業からの勧めで選んだもので、コストも安価で特に不満はなかったという。サービス終了の報を聞くまでは。

 クラウドインフラがなければSaaSは提供できない。サービス存続のピンチに陥った日本ツクリダスだが、社内に重苦しい空気が流れることはなかったという。

 「設計、開発、営業、サポートも自分一人で、他の従業員はそもそもエムネットくらうどのことをあんまり知らなかったので騒ぎにはならなかった。自分はわりと楽観的で、なんとかなるんじゃないかというくらいに考えていて……。記事としては、ここで地獄に落ちていた方が良かったかな(笑)」(角野社長)

「なんとかなった」の背景にさくらインターネット

 サービス存続のため、新しいパートナー企業とともに、クラウド移行作業を進めることになった。クラウドインフラとして提案されたのは3案。世界大手のサービス、もともと使っていたサービスの後継版、そしてさくらインターネットのクラウドインフラサービス「さくらのクラウド」だ。

 クラウドインフラ選びの基準はサポート体制の厚さだった。角野社長は本システムの設計には大きく踏み込んでいるものの、IT技術そのものには深くタッチしていない。細かな部分についてはクラウドの専門家に任せる必要がある。

 世界大手のサービスは、外資でありサポート体制に不安があり、従量課金制でコストも上限がなく利用者が増えれば増えるほど青天井になる恐れがあった。残る2社は国内事業者だが、システムのより具体的なところまで開発支援をしてくれて、コスト面でもデータ転送量による従量課金がないさくらインターネットに頼むことにした。

 エムネットくらうどのクラウド移行では、驚くことに“中の人”が開発まで手伝った。パートナー企業に偶然、副業で参加していたさくらインターネットのエンジニアが、サーバの選定や移行にかかる開発作業を支援したのだ。これは、さくらインターネットの就業規則として副業が許されていることから、中の人がフリーランスエンジニアの一人として、開発に参加できたという幸運も重なっていた。

 「本当にさくらインターネットのエンジニアに依頼できた。これ以上安心なことはない。これが選択の決め手になった」(角野社長)

 副業エンジニアによる開発は標準のサービスではないが、さくらインターネットは開発体制がないと悩む企業を支援できるよう、60社を超えるシステム開発会社などと手を組み、サーバや機器の選定から開発までを支援できる仕組みを用意している。

 もう一つのさくらインターネットらしい支援といえば、移行期間中の支払免除だ。同社のクラウドインフラサービスはコスト面でも最も安い選択肢だったが、今回の作業は実際に稼働しているシステムの移行。稼働中の旧クラウドインフラサービスと、移行中のクラウドインフラサービスを同時に使うとなれば、移行期間中のコストが倍になってしまう。

 さくらインターネットはその移行期間中、クラウドインフラを無料で提供した。同社は、新型コロナウイルス感染症の情報をまとめた有志Webサイトや、焼失した首里城のデジタル復元プロジェクトに無料でクラウドインフラサービスを提供するなど、コスト面での支援に定評がある。

 もちろん、クラウドインフラの性能も見逃せない。「町工場が使うからといって、パフォーマンスを犠牲にはできない。利用顧客が増えていたため、移行の際にサーバのスペックを上げてみた結果、以前より反応が速くなり、顧客の満足度も高くなった。それでもコストはこれまでよりも安い」(角野社長)

トラブルゼロで完了したクラウド移行

 クラウドの移行は20年に実施。その後、トラブルは何も起きていないという。

 「さくらインターネットで良かったとしか言いようがない。私はITの専門家ではないが、それでも問題なくプロジェクトを進められた。唯一やったことといえば、さくらインターネットとの契約部分だけ。ID決めて、パスワード決めて……(笑)」(角野社長)

 日本ツクリダスは現在、システムエンジニアを2人抱え、システム開発やサポートの内製化を進めている。さくらのクラウドは社内のエンジニアからの信頼も厚い。今後も開発体制の強化に向けエンジニアの採用を続ける予定だ。

 「過去に利用していたサービスでは、原因不明で停止して問い合わせても答えが返ってこないこともあった。利用しているのはまだ短期間だが、さくらインターネットのサービスは評判以上に安定し、速く、そして安心できると感じている」(角野社長)

 日本ツクリダスの成果を見て、DXやクラウド活用に興味がある企業、現状の業務環境に課題を抱えている企業は、ぜひさくらインターネットに相談してみてほしい。

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提供:さくらインターネット株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2021年11月5日