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2年ぶり開催の“コミケ”、新型コロナ対策はどうだったか? コミックマーケット99参加レポート(1/2 ページ)

» 2022年01月06日 08時00分 公開
[長浜和也ITmedia]

 2021年12月30日から31日にかけ、同人誌即売会「コミックマーケット99」(以下、コミケ99)が東京国際展示場(東京ビッグサイト)の東1〜8、西1〜4、南1〜4ホールと会議棟を使って開催された。19年12月のコミックマーケット97の後、20年5月のコミックマーケット98(以下、コミケ98)の中止、そして、コミケ99の2020年冬開催の延期を挟んで実に2年ぶりのリアル開催となった。

 筆者もコミケ99にサークルとして参加したが、感染症対策のためにこれまでとはさまざまなことが変わった。この記事では、筆者のコミケ99サークル参加の体験を通して、大型イベントにおける感染症対策の実際を紹介する。

photo コミケ99参加のために国際展示場に向かう人の列。31日には参加サークル1万1000と一般参加者5万5000人が集まった

日本最大級の同人誌即売会は、どのような制約を設けたのか?

 コミケ99の感染対策は、次の項目を柱にしていた。

  • 参加者数の抑制
  • ワクチン接種証明もしくは陰性証明の提示
  • 会場内における感染抑制対策の各自実施

 参加者数の抑制については、参加サークル数、一般参加者数ともにこれまでのコミケと比べて数を減らしている。参加サークル数はコミケ56以降が3万5000(開催3日間)、オリンピックの影響を受けたコミケ96とコミケ97は3万2000(開催4日間)だったが、コミケ99では2万1000(開催2日間)にとどまっている。ただ、一日あたりの参加サークル数は1万ないし1万1000と、これまでのコミケと変わらない。

photo コミケ参加サークル数と一般参加者の推移

 大きく数を減らしたのは一般参加者の数だ。これまでの入場者は開催3日間(会場は国際展示場)のコミケで50万〜53万人(夏)もしくは55万人(冬)で推移していた。開催が4日間だったコミケ96(夏)は72万人、コミケ97(冬)では75万人に達していた。

 従来「来る者は拒まず。制約は会場の間口の広さとキャパシティーのみ」で、当日に来場した人の数だけ会場に人を飲み込んでいったコミケだったが、コミケ99では事前予約制を導入し、一日あたりの入場者数にコミケとしては初めて制限を設けた。

 コミケ99では、一日あたりの一般参加者数を5万5000人と想定して事前入場チケットを販売。販売数が想定人数を超えた場合は抽選となり、SNSでは入場抽選の当落を報告する投稿が多数見られた。これまで一日あたりの入場者が20万人に迫る勢いだったのことを考えると、一般参加者は4分の1にとどまることになる。

photo サークル参加者向けの案内文書「コミケットアピール99」にあるように、来場者は1日あたり5万5000人と設定。参加サークル数は1日目が約1万、2日目で約1万1000としていた

入場にはワクチン接種証明が必要

 ワクチン接種証明もしくは陰性証明の提示に関しては、コミケ99の新日程による開催とサークル参加募集が開始された2021年8月2日の時点でコミックマーケット準備会から、感染症の専門家や内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室、文化庁、会場からの意見をもとに策定した(※)という「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における同人誌即売会の開催ガイドライン」に準拠することが予告されていた。(※資料「コミックマーケット99の新日程とサークル申込について」より)

 この方針を受けて、12月1日に「コミックマーケット99(新C99)におけるワクチン・検査パッケージの実施について」で具体的な方法を提示している。

 これによってコミケ99では接種証明又はPCR検査結果と本人確認証明書類(一般参加者のみ)、コミケ99チケット(一般参加者用チケットもしくは出展サークル専用通行証)で会場に入場できるリストバンドを受け取れる仕組みになっていた。この“接種証明又はPCR検査結果”の代わりに、コミケ99では東京都が用意して東京都民以外でも利用できる「TOKYOワクションアプリ」の提示を認めるとしていた。

筆者はTOKYOワクションアプリを活用

 筆者はサークル参加なので、入場には出展サークル専用通行証と接種証明(ワクチンは2回接種済み)の提示が必要だが、接種証明の書類をカバンから出してまたしまうという手間を省くため、東京都民以外でも登録できるようになったTOKYOワクションアプリを提示することにした(通行証はIDカードケースに入れて首からかける策)。

 登録は、まずLINEからTOKYOワクションアプリに友達申請をして自分のIDとTOKYOワクションアプリを連携させる。その後、本人確認書類と接種証明書類をTOKYOワクションアプリからカメラで撮影して登録すると数十分後に登録完了のメッセージが来て完了する。後はショートカットをスマートフォンのホーム画面に配置してタップして呼び出せるようにしておけば、接種証明画面をすぐに呼び出せる。

 ただ、入場にあたっては検温やリストバンドの受け取りがあるので「画面を見せて終わり」とはいかない。実際、一般入場では入場時間ごとに区分を設けて入場者が集中しないようにしていたにもかかわらず、入場待ち列が形成されていた(それでもいつものコミケと比べて短かったが)。

 また、事前登録の産物として多くの参加者が「徹夜組がいない!」「始発ダッシュがいない!!」「臨海線が空いている!!!」と報告している。

 サークル参加だった筆者は国際展示場到着が8時ちょうどと、入場待ちのピークに差し掛かったころになってしまった。この時点でサークル用会場入り口にも列が形成されつつあったが、スタッフが8レーンほどの受付口を設営して入場チェックを処理していた。入場チェックでは参加者が列に到達する前に本人確認書類(多くの人は運転免許証を提示していた)とコミックマーケット準備会が発行したサークル専用通行証(表にサークル名と代表者名を印刷、裏面にブース配置者の氏名とメールアドレス、携帯電話番号を自筆)を用意するように指示を受けた。

 受付口で記入内容を確認したうえで手首に非接触タイプの検温器を当てて体温チェックをクリアした人だけがその先に進める。筆者の場合、受付口到着から検温を終了してその先に進むまでの時間はわずか30秒以下。列に並んだ時点からの時間を入れても2分程度でチェックは済んでいる。

photo サークル参加者受付口。検温はこの段階で実施

 通行証の確認とワクチン接種証明(もしくはTOKYOワクションアプリ登録画面確認)のチェックは、その後も2回受けることになる。その最後のチェックでサークル専用通行証は回収される。そこで渡されたリストバンドを腕に巻いて、その後会場の出入りでチェックを受けることになる。このチェックも事前に用意をしておけば10秒程度で終了する。

photo 東配置サークル参加者の最終チェックゲート
photo ここでサークル専用通行証は回収されてリストバンドが渡された

 コミックマーケット準備会では、接種証明にTOKYOワクションアプリの使用を推奨していた。確かに「ワクチン接種証明書類の写しをカバンから出して確認後にまたしまう」という手間と比べたらスマホの画面を見せるだけで済むので使いやすい。コミケ99開催期間中、ワクチン接種証明書類の落し物が多いので各自確認するように促すアナウンスも繰り返し放送されていたことも考えると、TOKYOワクションアプリを利用するメリットは大きいだろう。

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