ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >

同じ楽曲に対する歌い方の違いを分析 歌声を可視化し、歌唱技術向上に活用Innovative Tech(1/2 ページ)

» 2022年01月13日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 お茶の水女子大学と産業技術総合研究所の研究チームが開発した「SingDistVis: 多数の歌声から歌い方の傾向を可視化できるインタフェース」は、同じ楽曲を多くの人が歌っている「同曲異唱コンテンツ」に対し、歌の基本周波数(F0)の推移をヒートマップや折れ線グラフで可視化するシステムだ。

 可視化したデータから、各歌唱者が共通して同一音高になる部分や、分散する部分(歌い方がそれぞれ異なる難しい箇所)を発見するのに役立ち、自身の歌唱技術の上達に活用できる。多数の歌唱者の中から自分がお手本としたい歌唱者を見つけるタスクにも活用したいという。

 近年、自身の歌った映像を動画共有サービス(YouTubeやニコニコ動画など)や、ソーシャルカラオケサービス(Smuleなど)などに投稿する機会が増え、同じ楽曲を多くの人が歌う同曲異唱コンテンツを楽しめるようになった。同曲異唱コンテンツには、楽曲をプロ1人が歌うようなコンテンツとは違い、複数の歌唱者による歌声が含まれている。言い換えると、同一曲に対する多様な声質と歌い方が含まれた大規模データセットといえる。

 この研究では、同一楽曲に対する多数の歌唱データである同曲異唱コンテンツを対象に、歌い方の分布や傾向を可視化するインタフェースを提案。歌唱における歌い方に着目し、音高としてF0推移の傾向・分布を可視化する。

 具体的には、歌唱者一人一人をグラフ表示するのではなく、楽曲全体の大域的なF0分布をヒートマップで表現する「Overview」表示と、数秒間の局所的なF0分布を折れ線グラフの集合で表現する「Detail」表示の2種類で可視化を行う。さらに、Detailを特定の歌唱者の楽曲全体のF0推移と重ねる表示方法も可能だ。

SingDistVisのユーザーインタフェースおよび操作手順
       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.