このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
米Carnegie Mellon UniversityのFuture Interfaces Groupが開発した「Mouth Haptics in VR using a Headset Ultrasound Phased Array」は、VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に空中超音波フェーズドアレイを統合し、VR体験に応じて超音波で唇や口腔内に触覚を与えるシステムだ。
使用される空中超音波フェーズドアレイとは、空中に超音波を放射する複数の振動子を配列した触覚ディスプレイを指す。このディスプレイは、1点に集中して超音波を集束放射できることが知られている。
今回はHMDの下側、躯体に沿って64個の振動子が配置されるように空中超音波フェーズドアレイを設置した。振動子はHMDから着用者の口元へ向くように、45度の角度で取り付けられている。他にもマイコンボードArduinoなどが接続されている。
空中超音波フェーズドアレイを統合したHMDを用い、着用者の唇や歯や舌を含む口腔内に空気中の音響エネルギーを集中させ、触覚を与える。唇の1点が瞬間的に触られてような感覚が作り出せるだけでなく、上下左右へのスワイプやランダムな動き、連続的な振動などの動的な動きも表現できる。例えば、唇の上をなぞるような表現が可能だ。
この触覚とVRを連動させることで、VRで体験する出来事と同期した触覚を提示でき、よりリアルで没入感の高い効果が期待できる。デモでは、コップでコーヒーを飲んだ際の口の中に入ってくる液体、煙草を吸う、歯ブラシで歯を磨く、クモの巣を突き破り歩く、唇の上をランダムに歩く昆虫などが再現される。
Source and Image Credits: Vivian Shen, Craig Shultz and Chris Harrison “Mouth Haptics in VR using a Headset Ultrasound Phased Array” ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI) 2022.
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR