News:ニュース速報 2001年2月28日 09:13 更新

星好きの“聖地”五島プラネ最後の投影をネット中継

 1957年から投影を続けてきた「天文博物館 五島プラネタリウム」(東京・渋谷)が3月11日の投影を最後に閉館する。この最終日の投影を,「インパク」ぐんまパビリオンがインターネットでライブ中継する。

 ライブ中継は3月11日午後1時から同7時まで。同6時開始の最終投影まで計4回を中継する。幕間には村山定男館長へのインタビューなども放送する。視聴には「Real Player 8」が必要。

 群馬県は県立ぐんま天文台を設立,さらに「美しい星空を守る」などとした「ぐんま星空憲章」を制定するなど,天文関連に熱心に取り組む自治体。政府主催のインパクでも「星空と宇宙」をテーマにパビリオンサイトを開設しており,日本の天文教育史に歴史を刻んだ五島プラネタリウムの最終投影をネット中継することにした。

 五島プラネタリウムは,東京天文台(当時)などの要請を受けた東京急行電鉄の五島慶太会長(当時)が設立。旧ソ連のスプートニクが初めて衛星軌道を周回した1957年の4月に投影を始めた。ドームは直径20メートル,445席が同心円上に配列されている。

 プラネタリウム投影機は1956年,西側のツァイス工場(オーバーコッヘン)で製造された「ツァイスIV型」初号機だ。モーターとギアで制御するフルマニュアル型のハイエンド機。ツァイスが定期的にオーバーホールを施しており,現在でも良好な状態に保たれている。同型機は名古屋市科学館でも稼働中。五島光学研究所が国産初のプラネタリウムを製造したのは1959年だった。

 五島プラネタリウムの特徴は,投影中に学芸員が肉声で星空を解説する点。現在はあらかじめ作られたプログラムを流す形がほとんどで,学芸員によるライブ解説はとても珍しくなった。最盛期は地方の修学旅行生らが訪れてにぎわったが,娯楽の多様化にともない観客数は減少。プラネタリウムを備えた公共施設も増えた。個性とあたたかさを感じさせる肉声ライブ解説だったが,主流のCGプログラムに比べると派手さに欠けるのは確かで“デートスポットには不向き”などとも言われていた。

 そのため「ここ数年非常に厳しい運営状況にあり,これ以上事業を継続することは困難」(五島プラネタリウム)と判断,“ファーストライト”以来44年で歴史に幕を閉じることにした。

 五島プラネタリウムは「活動を通じ,天文知識の普及に努めるという精神は受け継がれている」としている。星が好きだった天文少年少女であれば,五島プラネタリウムは一度は行ってみたい“聖地”だったはず。同館の投影をついに見ることができなかったファンは,せめてネット中継で名残を惜しもう。最終投影のテーマは,宇宙の深淵に挑み続けた20世紀の天文史と未来の展望を学芸員それぞれが語る「天文学の将来」だ。

関連リンク
▼ インパク「ぐんまパビリオン」
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