「早く帰れていいね、と言われた」「成果主義も悩ましい」――働くパパ・ママが感じる“いま会社に必要なこと”

2015年07月22日 10時00分 更新
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育児中の社員が活躍できる場が求められる中、企業はどうすれば彼らにとって働きやすい環境を提供できるのか。所属企業も境遇もそれぞれ異なる「働くパパ・ママ社員」たちの座談会から、これからの日本企業に必要な視点を考えてみたい。

 少子高齢化が進む中、企業にとって労働力不足はいよいよ深刻な問題になりつつある。総務省が2014年に発表した情報通信白書によれば、全人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は25年までに30%を突破し、生産年齢人口(15〜64歳)は低下の一途をたどると見込まれている。

photo 日本の高齢化の推移と将来推計(出典:平成26年版 情報通信白書)

 そこで今、多くの企業が注目しているのが「育児・介護中の社員」の活用だ。在宅勤務やテレワークなどを通じ、従来なら会社を辞めざるを得なかった中堅社員が働き続けられるようになれば、より多くの労働力を確保できるはずだ。また働く親たちにとっても、子どもを産み、育てながら快適に働ける職場環境は“理想”と言えるだろう。

 しかし、ほとんどの日本企業ではそのための労働環境/制度が整っていないのが現状だ。育児中の社員は会社に何を求めているのか。先進企業の取り組みとは――。自身も「働くママ」を経験し、現在は法人向けコンサルタントを務めるテレワークマネジメントの田澤由利代表をモデレーターとして開いた「働くパパ・ママ座談会」を通じて探ってみたい。

【参加者プロフィール】

三菱ふそうトラック・バス株式会社 人事・総務本部 栗田顕文さん

2006年にエンジニアとして中途入社。2008年に長女、2012年に次女が誕生。育児にかけられる時間を増やすために、社内公募制度を活用し、現在は人事部に所属している。

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 マーケティング本部 冨永千鶴さん

勤続14年目。2008年に長男が誕生。わずか半年で職場復帰したパワフルなワーママ。今春から息子が小学生になったことで、仕事と育児の両立が少し楽になったと感じている。

デル株式会社 マーケティング統括本部 井村英三さん

新卒入社して、勤続約20年。マーケティング部門では10年ほどになる。2007年に長女が誕生し、一時期は家族の介護や父子家庭も経験している。

アイティメディア株式会社 メディア・マーケティング本部 菱山文乃さん

2007年に新卒入社。2014年に誕生した長女が1歳になったのを機に復職。しばらく現場から離れていたこともあり、復帰4カ月になる現在、仕事と育児の両立に慌ただしく過ごしている。

日本企業から一転「ドイツ流」に……三菱ふそうが感じた“日本と海外の差”

photo 田澤さん(テレワークマネジメント代表取締役)

田澤 本日はお集まりいただきありがとうございます。さて、出産後に職場復帰する上で、重要になるポイントの1つが「出産・育児休暇の有無や長さ」だと思います。みなさまのご家庭ではいかがでしたか?

冨永 私は6カ月間の育児休暇をいただきました。ただ、保育園が36人待ちという状況だったので入園まで7カ月かかり……。会社からは「復帰してほしい」と言われていましたが、フルタイムの勤務はどうしても厳しくて。そこで復帰直後は、週に3日間はベビーシッターを使いながら午前9時半〜午後4時まで出勤し、それ以外の日は在宅勤務――という形で働きました。

栗田 保育園って1歳から入れたいという人もいますが、1歳を迎える前のほうが入りやすいとも聞きますよね。うちは上の子を0歳(6カ月)で保育園に入れまして、最初の慣らし保育のために、2週間の育児休暇をもらいました。

田澤 男性の育児休暇は一般的にまだまだ浸透していませんよね。当時の三菱ふそうさんとしても珍しいケースだったのではないでしょうか?

photo 栗田さん(三菱ふそうトラック・バス株式会社 人事・総務本部)

栗田 ええ、レアでしたね。育児休暇の制度自体はありましたが、エンジニアの世界はほぼ男性社会ですから、私のような男性が取得したいと言っても「なんだそれは?」と、なじみのない制度でした。私の場合は「ドイツに出張する時も2週間くらいかかる。それと同じだね」と上司に理解いただきオーケーしてもらったんです。

田澤 三菱ふそうさんは、2003年に三菱自動車から独立し、現在は、独ダイムラーグループの一員になっていますよね。もともと異なる風土があった中、栗田さんはだんだん会社が“ダイムラー流”に変わっていく様子を感じてこられたのではないでしょうか。

栗田 そうですね。男性の育児休暇も徐々になじみつつあると感じます。今では私の友人にも取得する人がいますし。

 こうした変化はやはり、外国籍社員の影響が大きいですね。例えばスウェーデン人の社員に「なぜ育休を取らない?」と言われたり。あるいは「ドイツ本社ではこういう取り組みをやっているのに、なぜ日本ではやらないのか」といった指摘も、当社が変わるきっかけになったと思います。

成果主義 or 労働時間制の“ジレンマ”

田澤 日本と海外の違いといえば、育児をしながら働く上でもう1つ重要になるのが「時間の扱い方」でしょう。日本は「労働時間制」が一般的ですが、海外企業の多くは「成果主義」。この2つは全く異なる考え方です。

 短時間で成果を上げられる人を逃さないよう、制度は変えていく必要があるでしょう。だからといって、完全な成果主義に突然切り替えるのも考えものです。特に育児中のパパ・ママ社員はもともと時間がないので、業務の成果だけで評価されるとなると厳しいはず。成果を上げるには一定の時間が必要ですから。

井村 そうですね。私も会社から求められる成果を認識しているがゆえに、育児に手がかかる時に「結果を出せないだろう」と自覚したことがあります。

 父子家庭になった当時チームのマネジメントをしていましたが、このままだとメンバーに迷惑がかかるしパフォーマンスが落ちてしまうと感じました。そこで、会社と相談して「求められる成果」を一段階下げ、時間と成果のバランスを取るために役割を変更することになったのです。

 当時ありがたかったのは、在宅勤務などさまざまなワークスタイルの選択肢があって柔軟に対応してもらえたことと、「3カ月に1度のペースで成果を振り返りながらやっていこう」と会社側から提案してもらえたことです。そんな体制がなければ会社を辞めていたと思います。

photo 菱山さん(アイティメディア株式会社 メディア・マーケティング本部)

菱山 私は復職後、産休に入る前と違う仕事を任されていますが、新たなスキルを習得しながら成果を高めていくには時間も必要だと感じています。

 期待されている成果に対しては「今あるスキルと時間でできるかぎり応える」としても、育児をしながらだと、肝心のスキルや仕事の質を高めたり、新たなことに挑戦する時間を確保するのが難しいですよね。社会から求められる仕事をするためにももっと成長していきたいので、それが悩ましいなと感じます。

栗田 私は育児をきっかけに社内公募制度を使い、もともと所属していた開発部から人事部に移してもらいました。

 子どもが生まれた当初は、それまで通りにあらゆる仕事を一手に引き受けていました。例えば、サプライヤーと製造ラインの間に入って調整したり、品質改善の仕事をしたり……。家庭のためには午後6時には帰らないといけないのに「これはきついな」と。

 ものづくりが好きで15年間エンジニアをやってきたので本当はやめたくありませんでしたが、子どものことを考えれば、この選択はよかったと思います。

働くパパ・ママを“時間の呪縛”から解き放つ「在宅勤務」という手段

田澤 先ほど「在宅勤務」というキーワードが出ましたが、先進的な企業では、育児や介護をしながら働く社員向けに在宅勤務やリモートワークを導入しているところもあります。実際に取り入れられている方の感想はいかがでしょうか。

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菱山 当社では育児や介護などを行っている社員に向けて在宅勤務制度を導入しており、実際に活用しながら働いている社員もいます。

 ただしわが家の場合は、自宅にいると仕事にならないくらいの年頃の子どもがいるので、代わりにこの4月から導入されたフレックスタイム制度を活用し、早めに出社して早めに帰るという選択をしています。幼い子どもがいると朝しか時間を作れないので、働き方を柔軟に選べるのはありがたいですね。

栗田 当社は昨年から本社社員を中心に在宅勤務制度を本格導入し、今は私もこの制度を活用しています。

 個人的にインパクトが大きかったのは「会社の内線が携帯電話に切り替わり、社外でも内線通話ができるようになったこと」と、「社内メンバーとPC画面を共有しながらリモート会議できるようになったこと」です。

 子どもの迎えは私が担当しているので、早めに帰宅して夕食をとり、自宅で午後10時ごろまで仕事をすることもあります。リモート会議ツールなどの利用によって、自宅でも会議や打ち合わせが簡単にできるのは助かりますね。

photo 冨永さん(シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 マーケティング本部)

田澤 最近ではデスクトップ仮想化などの技術を通じ、リモートワークでできることが増えているとも聞きます。在宅勤務でエンジニアのお仕事などに取り組んでいる事例もあるのでしょうか?

冨永 そうですね。日本でも自動車メーカーや製造企業で、設計・デザイン環境のデスクトップ仮想化導入も進んできています。海外ではすでに、ダイムラーさんやボルボさんが、製品の設計・デザインの仕事を遠隔操作できる環境を整備しています。

 リモートワークで使えるITツールといえば従来はOfficeソフトやビジネスアプリが中心でしたが、ここ数年でデバイスもインフラもかなり進歩していますね。

新しい働き方への「期待」と「不安」 企業が進むべき道は

田澤 在宅勤務やテレワークにはいくつもメリットがある一方、テレワーク導入のコンサルティングをしていると、日本企業が抱えがちな不安も見えてきます。

 例えば、タイムカードは基本的に自己申告制ですが、社内にいれば「社員が打刻する姿」が目で見えますよね。一方、在宅勤務だと働いている姿が見えないので不安だというのです。同じ自己申告制でも、仕事をしている姿が見える/見えないの差は大きいようです。この問題が解決できれば、在宅で働く人も会社も安心できると思うのですが。

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栗田 当社では、社内にいればPCへのログイン/ログアウト時間に基づき勤怠が自動入力されますが、自宅などからPCにログインすると、うまく記録できないことがあります。その場合は「○○の理由で○時間働いた」と申請を出すようにしています。今後はこのあたりも柔軟に対応できるようになるといいですね。

 また、フレックスタイムと在宅勤務を組み合わせて働き始めたころは、「おまえは早く帰れていいな」などと言う心ない人もいました。こちらは限られた時間で成果を出そうとしているにもかかわらず……です。

 「誰がいつまでにどんな成果を上げるのか」という目標が共有されていれば何も問題ないはずですし、旧来型の一方的な解釈を押しつけていては何も変わりません。こうした新たな価値観を共有できるようになれば、男性の育児参加も増えていくのではないでしょうか。

田澤 ITの進化に伴い、ここ数年で働くお父さん・お母さん社員向けの環境はかなり整ってきた印象があります。あとは、それに会社や社員の“マインド”がついていけるかどうかなのかもしれませんね。

井村 そうですね。仕事と育児の両立に関する問題の多くは、その会社のシステムや勤務制度がまだ社員のニーズに追いついてないのが原因だと思います。社員1人1人の働きやすさや生産性を向上させるためには、まずは少ないコストでリモートワークなどを試験導入するなどし、会社としての働き方と意識を同時に改善していくべきではないでしょうか。


 座談会の参加者からは、彼らが仕事と育児を両立する上でのさまざまな課題、現状、対策などがリアルに語られた。これらは決して本人たちだけの課題ではなく、あらゆる企業が考え、見直していくべきことだろう。

 ここ数年で、高性能なモバイル端末やデスクトップ仮想化技術など、パパ・ママ社員たちが求める働き方を実現するためのITインフラはいくつも登場している。これらの中から適切なツールを取捨選択し、新たなワークスタイルを会社の風土として根付かせていくことが、企業が継続的に成長していくための重要なカギになるはずだ。

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社員1人1人にあった働き方を

時代とともにベストな働き方は変わっていくもの。デルは日本の自社オフィスで、効率と満足度を高めるためのさまざまなワークスタイルを実践。職種や仕事内容が異なる社員1人1人に最適な働き方を追求しています。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2015年8月21日

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