「“知的生産性”を高めるには、元気がいい組織でないとダメだ」──今から約28年前、「人の働き方」に早くから着目し、社内に研究機関「知的生産性研究所」を設立した会社がある。情報システムや教育、オフィス環境構築などを手掛けてきた内田洋行だ。
1989年に同研究所を立ち上げて以来、企業の生産性を高めるための取り組みや、企業コンサルティングを続けてきた。
「働き方改革」が社会全体の課題として取り上げられるようになってから、場所や環境にとらわれない効率的な働き方を目指す企業が増えている。働く人の生産性向上や長時間労働の改善、適切なワークライフバランスといった課題を解消することで、収益の拡大や事業継続性の確保といった、企業全体の利益にもつながる認識が浸透し始めたからだ。
この記事を読んでいる人の中には、「勤めている会社で新制度が導入された」「外出先でも業務ができるように新デバイスが支給された」という方もいるだろう。しかし、本当にあなたの働き方はそれで変化しただろうか。
今回は、働き方改革の老舗ともいえる知的生産性研究所代表の平山信彦さん(内田洋行 執行役員 知的生産性研究所)と、ツールを提供する総合ITベンダーとして働き方改革を支援してきたデルの山田千代子さん(常務執行役員 クライアント・ソリューションズ統括本部 統括本部長)の対談を通じて、働き方改革における真の価値をひもといていこう。
──本日はどうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、昨今話題の「働き方改革」。なぜ企業はこれに取り組む必要があるのでしょうか
平山 少し長い目で見ると、勘の良い企業はもう気付いています。かなり近い将来に世の中が根本的に変わってしまうのではないかと。その要因は「人口構成の変化」と「テクノロジーの進歩」です。
労働力の中心といわれる生産年齢人口(15歳〜64歳)が、95年をピークに減少の一途をたどっています。年齢や性別、異なる価値観を受け入れ、多様な人材の活用を目指す「ダイバーシティー&インクリュージョン」に進んで取り組んでいこうという考え方がありますが、黙っていてもそうせざるを得ない環境がやってきます。
さまざまな価値観を持つ人が混在する職場では、これまでの「○○さん、いつものあれやっといて」といった暗黙知(言葉には表せないノウハウ)の共有をベースとしたコミュニケーションは通用しなくなります。
加えて、現場でも従来のやり方が通用しなくなってきたというのもあります。例えば営業部門。これまでは自社の商品を営業マンが熟知して、お客さまにその商品優位性を理解していただくことで取引が成立する、いわゆる商品ありきの営業でした。今はお客さまがどういったことに困っていて、解決するにはどのような提案ができるのか、そんな営業のやり方に変わってきています。
そのためには、人の育成やプレゼンテーションの手法、バックオフィスの存在、上司と部下のマネジメント方法など、従来のやり方を改革しないわけにはいかないのです。
山田 社員の視点といえば、以前と比べて働く環境は全く違うものになっていると思います。特に女性からすると、その差はずっと激しい。「共働き」に関して言えば、以前は子供を産んだときに同僚から「やめないの?」と聞かれましたが、今は「あれ、やめるの?」に変わりました。
子供が生まれても共働きで働き続ける──それを実現するためにはどのような会社、職種、雇用条件で働くべきなのか、吟味する人が増えています。労働人口が減っている今、企業側は優秀な従業員を確保し維持していく為に、働く環境を整えていく必要があるのです。
働く環境が整えば従業員の生産性が向上し、その結果企業の業績が伸びるとも言われています。
──内田洋行は、働き方改革をサポートするコンサルティングを150件ほど手掛けてきたと伺っています。社内で改革を実現するためにはどういった手法が有効なのでしょうか
平山 経営としてのありたい姿と、社員としてのありたい姿、2つのハピネスをしっかり描くことが大事ですね。
われわれが提案する方法は2つあります。1つは、社内の現状を分析して課題を抽出し、解決していくもの。もう1つは、現状分析から入るのではなく、自分たちが3年後、5年後にどうなりたいのか、ありたい姿から現状を見下ろしたときにどれくらいの差分があるのかを測って埋めていくというものです。
どちらがいいかということは一概には言えませんが、弊社のクライアントに「どちらで行きますか」と聞くと、ほとんどは後者を選びます。
「若手社員の元気がないから、施策を打って元気づけしてみよう」──そう簡単に済むものではないことを多くの企業が気付き始めていますね。
経営視点では、働き方改革によって生産性と仕事への熱意や愛着心(エンゲージメント)を強めていこうというものが多い。しかし社員の立場から見れば、会社の生産性に貢献して愛着心を高めたところで、うれしくないとは言わないまでも、モチベーションが上がるわけではないはずです。
社員視点では、自分の仕事が楽しくなったり、わくわくしたり、やりたい仕事ができたり、一番実力を発揮できるツールが使えたりすることが働き方改革を実行するメリットとなるはず。
これらは、単に視点の違いによって見え方が異なるだけです。働き方を工夫することで生産性を上げることは、企業にとって収益性を高めるということ。つまり、社員にとっては無駄な仕事がなくなってストレスが減ることで、働き方改革が双方にとってメリットになる“共通目標”になりえます。これらをきちんと整理していくこと、これが最初の出発点です。
──「一番実力を発揮できるツール」の話題が出てきましたが、ITツールを提供してきたデルの立場からはいかがでしょうか
山田 従業員の満足度が上がると顧客満足度が81%も向上し、さらに離職率が50%も低下することが分かっています(米Forrester Research調べ)。
お客さまの要望も変化してきた事を実感しています。従来は全て同じ仕様でデスクトップPCを100台、15インチのノートPCを100台──といったオーダーが多かったのに対し、近年は薄型ノートPCを15台、デスクトップPCを5台──といったように、オーダーが細かくなってきています。部署や働き方によって必要とするPCの仕様が多様化してきたのでしょう。
今は「(育児を続けながら)働き続けるためにはどういった環境、ITツールが必要ですか」と、企業から質問が寄せられるようになりました。御社の知的生産性研究所が設立された約28年前に比べたら、まさに隔世の感がありますね。
1つの会社だから1つの形に固執するのではなく、社内でもいろいろな働き方、仕事、部署、担当している業務に応じてリクエストが変わってきていることを実感しています。こうした変化を捉えて、デルが「働き方の改革」を推し進めていくことになったのです。
まず弊社の実例と1,000社のお客さまを調査した結果、企業の働き方は大きく7つに分類できると考えました。「社内移動型」「デスク型」「外勤型」「在宅型」「クリエイティブ型」「エンジニア型」「現場作業型」といったもので、これを「7つのメソッド」と呼んでいます。
それぞれの働き方に合わせた製品、サービス、ソリューションを提案していくのですが、例えば「デスク型」と定義しているテクニカルサポートや事務のような作業中心の職種では、モニターが鍵となります。人によって座高は異なるため、モニターが上下に動かないのは苦痛です。日本のデスクは狭いので、周辺機器のワイヤレス化も重要ですね。-
社内で会議から会議へと動き回ることが多い「社内移動型」の場合、第 7 世代インテル© Core™ i5 プロセッサーを搭載した超薄型・高性能な法人向け2-in-1タブレット「New Latitude 5285 2-in-1」のような、なるべく軽いPCで、かつファイルのシェアやプレゼンの機会が多いため「インテル© Unite™ ソリューション」といったコラボレーションツールの活用をおすすめします。
このように、実際に現場で働く人が感じる細かな差を商品に反映しています。社員生産性に直結するため、デバイス選択の自由度を上げることは、従業員の満足度をあげる方法として有効です。
平山 冒頭でダイバーシティーの話をしましたが、オフィス環境も含めて、企業の中身が多様化していく方向感は間違いなくありますね。7つのメソッドの話を聞いてなるほどと腹落ちしました。働き方改革の環境を考える上で、従業員がパフォーマンスを発揮できる環境の選択肢を企業がどれだけ持てているか、ものすごく重要だなと。お話を伺って、立場は違っても私たちが日頃行っている議論と同じだなと感じました。
生産性が上がることで自分の仕事がどうなっていけばうれしいのか、どう変わっていきたいのかを自分事としてリアルなイメージを持っておく。自分がありたい姿を思い浮かべないまま、会社から最新ツールを支給されてもうまくはいきません。
人の行動を変えないと意味が無い。行動変革も重要なのです。
──働き方改革による急激な変化は、そこまで起こらないだろうと大半の人が考えている節も見られますが……
山田 私自身もそこまでは変わらないだろうと初めは思っていました。環境を整えたからといって、それが入社理由や会社に居続ける理由にはならないと。
私には中学3年生になる娘がいるのですが、今は最初にYouTubeを見て体育の授業でダンスを学ぶそうです。合唱の練習もアルトパート、ソプラノパートをそれぞれがYouTubeを見ながら家で練習し、学校では短時間で合わせられるようになったと。放課後に残れない事情があるにもかかわらず、以前は全員残りなさいというのが普通でした。それは今、解消されているのです。
こういった経験をした子供たちが、あと数年で会社に入ってきます。今ほど若い社員と経営陣のデジタルデバイドが激しいことはないでしょうね。今後はその傾向がさらに加速するはずです。
「もっと効率のいい方法があるのに、なぜ旧来の方法を取らなくてはいけないのか」──育った年代、どの時点からITが一般的になってきたかによって考え方が全く異なります。デジタルネイティブの人が入ってきたときに、環境が整えられていない会社はかなり厳しいでしょう。そこに気付き、若い人のセンスや意見を取り入れられた会社が働き方の改革に追い付いていけるのではないでしょうか。
平山 働く人が会社に幸せな愛着心を築けるかはものすごく重要です。その人が優秀なほど、企業を選択肢として見ている中で「そんなIT環境しかないなら能力を発揮できません」というのは当然。今まではお行儀良く言わなかっただけで、これからはできる人ほどそうなるでしょう。そういった意味では、選択肢や多様性はあらゆることの鍵となりそうです。
ただ、その裏側には厳しい側面もあります。個人が企業を選ぶと同時に、企業の人選が厳しくなっています。従来は「専門知識を持っている」「経験が豊かである」など、技能的側面が能力を決めていました。ところが、昨今は話題のAI(人工知能)など、従来のスキルを代替する手段が出てきている。
働く人の何が本当の強さになるかというと「いかなる状況でも自分でしっかりとクリエイティブな活動ができる」「人と人をつなげる共感醸成能力を持っている」といった、AIにはまだ任せられない、働く上での基本的な能力が強みになっていくはずです。そう考えると、働き方改革は企業や組織のためにやるのではなく、個人が社会で生き残るためにやる側面も出てくるのではないでしょうか。
自分がビジネスパーソンとして、パフォーマンスを発揮し続けるためには自身の行動変革こそ重要になってくるのです。
山田 新しい人々が会社に入ることで活性化し、新たな価値観が生まれて進化していく。それを実現するためには、適したオフィス環境やツールが必要になっていく。それができない企業は選ばれずに、衰退していくのかもしれません。
あなたの会社では、どんな人々が働いているだろうか。同僚や上司、あるいは経営陣まで、さまざまな立場にいるビジネスパーソンが大きな目的を達成するために与えられたミッションを日々こなしているはずだ。
業務でパフォーマンスを最大限発揮できるように、それぞれの働き方に最適なデバイスを検討してみてはいかがだろうか。
社員全員に同じPCを一括して支給する時代は終わりました。同じ会社でも、職種によって最適なデバイスはさまざま。働き方に合わせたデバイスとサービスを与えることで、効率を最大化できます。 デルでは全世界のお客さまと直接対話する中で、働き方は大きく7つに分類されることが分かりました。それぞれの生産性を最大化すべく、ハードウェア、周辺機器、サービスおよびセキュリティの最適な組み合わせによってビジネスパーソンの生産性を高める自由な働き方を支援しています。
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