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「太鼓の達人」でリハビリを――ナムコならデイケアもこうなる

ナムコが横浜市の中心部にデイケアセンターをオープンした。人気ゲームを高齢者のリハビリ向けに改良して設置。楽しみながら身体能力の低下を防ぐ。

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 ゲームセンターでおなじみの「ワニワニパニック」や「太鼓の達人」を高齢者のリハビリに活用するデイケアセンター「かいかや」が10月1日、横浜・みなとみらいにオープンする。運営するのは、両ゲームを開発したナムコ。同社が介護施設の運営に乗り出すのは初めてだ。

 デイケアセンターとは、介護保険で利用できる通所施設。要介護認定を受けた高齢者が、リハビリや食事、入浴などのサービスが受けられる。日帰りが原則で、介護者の一時的な負担軽減という側面もある。

 オープンしたのはショッピングセンター「横浜ワールドポーターズ」の6階。映画館や雑貨店など若者向けの店が多く、来館者は20代がメインだ。病院に併設されたり、郊外に作られることが多いデイケアセンターだが、ナムコはあえて横浜市の中心部に持ってきた。「地域社会と密着でき、高齢者が楽しく、生き生きできる立地を選んだ」(ナムコの燒リ九四郎社長)ためだ。

 最上階に位置するかいかやの窓からは、みなとみらいの景色が一望できる。希望者には、近所の山下公園や三渓園への水上バス/ウォーキングツアーを提供するなど、立地を生かしたイベントも企画している。

 利用者は横浜市内の指定区域内の在住者に限られる。料金は1日1325円からで、定員は最大40人。

楽しみながらリハビリを

 かいかやのテーマは「大正ロマン」。341.28平方メートルの敷地内に、和室や洋館風の食堂、ソファー並べたラウンジなどを備え、高齢者がくつろげる空間を目指した。


ナムコグループの日活の協力を得、石原裕次郎や小林旭が撮影で使った小道具や、映画ポスターなども展示した。日活映画の上映会も行う予定だ

 太鼓の達人やワニワニパニックは、食堂のすぐ隣に1台ずつ設置。反射神経やバランス感覚を鍛えるリハビリ用だ。

 ゲームはそれぞれ、高齢者向けにカスタマイズしてある。太鼓の達人は、握力が弱い人でもばちを取り落とさないようベルト付き。車椅子からでも手が届くよう、太鼓の位置は一般向けより低くしてある。


ばちは握力支援ベルト付き。太鼓はキャスターを付け、高齢者が叩きやすい位置に移動できるようにした

 表示画面も高齢者向けに一新。「1P」「2P」といった表記をやめ、「左の人」「右の人」など漢字・ひらがな表記にした。太鼓の叩き方によって増減するパワーゲージは「魂」から「力」に書き換えた。


「1P」は「左」、2Pは「右」。パワーゲージは「力」と表現

 音楽療法士の協力を得、「炭坑節」「ふるさと」「荒城の月」など高齢者に馴染み深い楽曲をラインアップ。音楽なしで、太鼓を叩くだけのモードも搭載した。

 同社はこれまで、ゲームセンター向けと同じソフトを搭載した太鼓の達人を、全国の福祉施設に納入してきたが、納入先から「太鼓をたたくスピードが早すぎる」「知っている曲がない」などの意見が上がったため、専用の新製品を開発した。新製品は、11月中旬から全国の福祉施設向けに販売する予定だ。


ワニワニパニック

 ワニワニパニックも太鼓の達人と同様、ハンマーに握力支援ベルトを装備。車椅子のままで遊べるよう、きょう体下部に足を入れられるスペースを空けた。「ワニワニパニックを1年間定期的にプレイすれば、反射神経や柔軟性がアップすることが実験で実証されている」(説明員)(関連記事参照)


わかがえる湧き水

 もう一つ、オリジナルのゲーム機「わかがえる湧き水」を設置した。音を聞いたり光を見たら、すぐボタンを押すというゲーム。反応が早ければおみくじがもらえ、ししおどしに水が流れる仕組みだ。


燒リ九四郎社長

 「ナムコがなぜ介護を?という質問をよく受けるが、1985年に発話が不自由な人のためのコミュニケーション機『トーキングエイド』を発売して以来、ナムコは福祉事業を手がけてきた」と高木社長は話す。「遊びは年齢・世代に関係なく人が必ず求めるもの。高齢化が進む日本で、高齢者にも“遊びのある生活”を提供したい」(燒リ社長)。

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