「規制の範囲、むしろ拡大」――漫画家3団体、都条例改正案に反対声明
漫画家3団体が、都の青少年育成条例改正案に反対する声明を発表。「漫画家の表現の自由を侵害する恐れが極めて高い」とし、都議会が改正案を否決するよう強く求めている。
日本漫画家協会(やなせたかし理事長)と21世紀コミック作家の会(さいとう・たかをさんなど5人が理事)、マンガジャパン(水島新司代表)の漫画家3団体は11月29日、東京都が再提出を予定している青少年育成条例の改正案に反対する声明を発表した。
「漫画家の表現の自由を侵害する恐れが極めて高く、創作活動を萎縮させる可能性がある」と指摘。都議会が改正案を否決するよう「強く求める」としている。
新たな改正案では、「非実在青少年」という文言を削除し、「刑罰法規に触れる性交もしくは性交類似行為」などを「不当に賛美しまたは誇張」した表現を対象とした(「非実在青少年」を削除、再提出へ 都条例改正案)。
声明では、「刑罰法規には(18歳未満を対象とした)淫行条例なども含まれるため、非実在青少年に対して抱かれた懸念は一向に解消されていない」と指摘。さらに、18歳以上の男女も対象となったことで、前回の改正案より「規制の範囲を拡大する内容になっている」とする。
「不当に賛美しまたは誇張」という要件は「漠然・不明確」で、「漫画やアニメの持つ多様で柔軟な表現方法を奪うことになるのは明白」と指摘。漫画・アニメで誇張した表現を使用するのは「その技法としていわばイロハのイ」であり、条例案の文言が「漫画やアニメの持つ多様で柔軟な表現方法を奪うことになるのは明白」としている。
さらに、漠然とした要件に基づいて、作品が不健全図書指定されることになれば、「コンビニでの販売が事実上不可能」という「重大な結果を生じかねない」と懸念している。
条例の対象が「漫画、アニメーションその他の画像(実写を除く)」とされるなど「漫画を標的とするものが明確化」されていることについても、「漫画家が容認できるものではない」とする。
前回の改正案が否決されて以降、市民や議員による議論を待たず、業界側が主張していた自主規制による対応の意向も「完全に無視」し、半年という短期間で新たな改正案が再提出されたことには「驚きを禁じ得ない」とする。
改正案の内容が、議会開会の直前(8日前)に公表されたことは「適正手続きという観点からも看過できない」と指摘。「どんな手段を使ってでも改定案を通そうとする施政者の恣意的な姿勢をかいま見たようで、非常に強い不信感を覚える。このようななりふり構わないやり方で作品を評価・規制されるのは、本当に恐ろしいことであると言わざるを得ない」と強く批判している。
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