「愛国ではない、害国だ」 尖閣デモと公用車襲撃を否定され困惑する中国ネットユーザー(2/2 ページ)
尖閣諸島をめぐって中国内では反日世論が高まった。一方で、反日デモや公用車襲撃事件について「愛国ではなく『害国』だ」という論評も現れており、中国ネット世論はそう単純ではない。現地からのリポート。
昨日までの「愛国」が「害国」に ネット世論は猛反発
最初の反日デモが起きた翌日の20日には、中国青年報が水を差すように「同胞の車を破壊するのは愛国(アイグォ)ではなく害国(ハイグォ)である」という記事を掲載した。この韻を踏んだ「害国」という言葉に一度はネット世論も少し盛り上がる。
後日、唐家セン元国務委員が「日本大使公用車襲撃事件」の中国人容疑者について「害国者」と発言。また日本の華字紙「日中新聞社」社長で、人民日報日本支社長の韓暁清氏は、尖閣に上陸した活動家は「害国者」だと、「真剣に日中関係を再考しよう」という著名記事内で記している。記事自身は至極日本的正論で書かれたもの。詳細はサイト「Kinbricks now」の「「尖閣に上陸した活動家は害国者」中国のホットイシューとなった「保釣害国論を読む」に書かれている。
こうして一気に「害国」ないしは「保釣害国論(保衛釣魚島害国論)」という言葉が掲示板や微博などで使われるようになった。ただ、ポータルサイト「鳳凰網」が実施した「尖閣上陸行動は害国であり愛国ではないという意見に同意できるか」というWebアンケートでは、投票数3万5000強のうち、愛国が9割以上を占める結果となった。中国ネットユーザーの多くは「はいそうですか、害国だったのですね」と素直に同意することができないようだ。
微博では「昨日までの愛国が害国扱いされた」「官の腐敗は害国と言われないのに、作りたての橋が勝手に壊れても害国ではないのに、庶民が訴えたら害国なんだ」といった中国政府に向けられる不満のつぶやきが一気に投稿された。各ニュース記事でも、「大使公用車襲撃」はよくないとは書くものの、害国論については反対もしないが賛成もしないスタンスのメディアが多く、ネット世論の舵取りが難しい段階に直面していることがうかがえる。
SNSが普及した今、都合の悪い書き込みを消して沈静化を図るやり方はデモの開催からみても難しく、中国政府は微博の公式アカウントや、Webメディア、テレビなどさまざまなメディアを活用して世論を誘導する方向に動いている。「害国」がホットワードとなり、政府に裏切られたという意見がある中、どのように中国政府はネット世論をコントロールしていくのだろうか。
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