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「ネットはリアルにどんどん浸食されている」――ニコ動6周年 川上会長に聞く、リアルに投資する理由(1/4 ページ)

ネットサービスながら、「超会議」や「ニコファーレ」などリアルイベントへの投資を加速するニコニコ動画。「ネットとリアルの境界がなくなりつつある」と、ドワンゴの川上量生会長は言う。

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 2006年12月12日、実験サービスとしてひっそりスタートした「ニコニコ動画」は今年、6周年を迎え、登録会員数2946万人、プレミアム会員175万人(9月末時点)のサービスに成長した。

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最近、iPhoneアプリの「にゃんこ大戦争」にハマったという川上会長

 今年のニコ動は、ネットサービスの枠を大きく飛び越え、現実社会へばく進。4月に千葉・幕張メッセで敢行したリアルイベント「ニコニコ超会議」は9万人以上を動員し、12月には東京・六本木のイベントホール「ニコファーレ」で、衆院選前の党首討論を実現した。

 ネットサービスのはずのニコ動が、リアルへの進出を深めている。一見不可解なこの動きは、ネットユーザーの変化に対応したものだと、同社の川上量生会長は言う。

 「若い世代は、ネットとリアルの境界がなくなりつつある。ネットで生きることとリアルで生きることを融合しないと、“ネットの人”の生きる場所がなくなってしまう」

ネットはリアルにどんどん浸食されている

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07年1月当時のニコニコ動画

 ニコ動が誕生した06年末、日本で人気のサービスは、“ネット弁慶”がコミュニケーションを楽しめる場だった。当時最もよく使われていたのは、匿名掲示板「2ちゃんねる」や、半匿名でコミュニケーションできるmixiなど。匿名でコメントでき、ネットで人気のアニメやゲームの話題で盛り上がれるニコ動も、ネット弁慶に居心地の良い場所を提供していた。

 「昔は、現実社会に居場所がない人がネットにたまってた。ネットの中に仲間がいて、現実社会と隔離した生活ができていた」と川上会長は振り返る。だが「今ではそれが不可能」だ。「ネットで生きるにも、リアルなコミュニケーションをやらざるをえない」

 この6年でPCやスマートフォンが一般化し、ネットサービスやコミュニティと現実社会が急接近している。今年、国内ユーザーが急拡大したFacebookは、実名や所属を明かすのが前提で、3700万ユーザーを突破した「LINE」は、携帯電話の電話帳に入っている友人とコミュニケーションするサービス。それぞれ、“リア充”であるほど楽しめるサービスとも言える。

 「今、大きな力を持っているのは、リアルの従属物としてネットがあるようなサービス。ネットがリアルにどんどん浸食されている。ネットで生きることとリアルで生きることを融合しないと、“ネットの人”の生きる場所がなくなってしまう。隔離された場所はどんどん狭くなっていくので、ネットを拠点として現実とつながらないと、幸せになれないと思う」

 ニコ動のリアルイベントを通じ、ネット弁慶にリアルとの接点を提供する。「Facebookはリアルからネットに進出する場所。ニコ動はその反対に、ネットからリアルに進出する場所だ」

ニコ動は「オタクが作ってヤンキーが見ている」

 ニコ動では、“隔離されたネット”を愛していた旧来からのコアユーザーと、ネットとリアルをあまり区別しない若年ライトユーザーとの間で、対立が起きているという。

 初期のニコ動を盛り上げたのはコアユーザーだった。アニメのMADや「初音ミク」で作った楽曲など、作り込んだコンテンツを投稿するのはコア側だ。一方で、MADを見たり、「歌ってみた」を投稿したり、“ボカロP”のライブに行くなど、コンテンツの受け手・視聴者側にいるのは20代前半までのライトユーザーが中心。川上会長は、コア側を「オタク」、ライト側を「ヤンキー」と分類し、こう分析する。

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