「こいつ動くぞ!」現実に 実物大ガンダムを動かすプロジェクト始動 2019年実現目指す
実物大ガンダムを2019年に実際に動かすプロジェクトがスタート。高さ18メートルのガンダムを動かすアイデアを国内外から募集し、実現を目指す。
「機動戦士ガンダム」の実物大モデルを5年後の2019年に実際に動かすプロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」を7月9日、バンダイなどが発表した。高さ18メートルの実物大ガンダムを動かすアイデアを国内外から募集し、実現を目指す。ガンダムシリーズの富野由悠季監督は「ようやく、絵空事で考えていたものが形になる」と期待する。
2009年に東京・お台場で公開された実物大ガンダムは首の一部が動くだけだったが、新プロジェクトではシリーズ40周年となる2019年に実際に動かすことを目指す。動かすためのアイデアは世界中から募集し、日本が軸となって実現を進める。
プロジェクトを担当するのは、サンライズ、創通が設立した「一般社団法人 ガンダム GLOBAL CHALLENGE」。技術監修は橋本周司・早稲田大学理工学術院教授が務める。7月下旬にWebサイトでアイデア募集要項を公開。実際に動かす「リアルエンターテインメント」部門と、仮想現実(VR)技術を活用する「バーチャルエンターテインメント」部門の2つについて、国内外から広くアイデアを募っていく。
アイデアは来年2月に締め切り、同年秋にプランを発表。これに追加するアイデアの募集などを経てプラン策定と実施計画を進め、2019年夏に動くガンダムがお目見えする予定だ。
都内で開いた発表会で、バンダイの上野和典社長は「ついにリアルスケールのガンダム動かすことにチャレンジしてみようと思った。本当にリアルに動くのか、バーチャルリアルか、その組み合わせか──想像は無限に広がる。日本の枠を越え、海外の叡智を結集することでチャレンジしてみようという試みだ」と話す。
「ガンダムファンの多くは圧倒的に日本とアジアだが、欧州を始め世界中にたくさんのガンダムファンが存在する。バンダイナムコのグローバル戦略上、重要なプロジェクトだ」
富野監督は「ようやくです。絵空事で考えてみたものがものの形になってくる。ものの形になってきたものが、発信者だけのものだったのが広く公募する形をとり、これまで観客だった人を巻き込むことで新しいエンターテインメントのフィールドを構築できるかもしれない」と期待。「72歳なので、5年後どうなっているか」と笑わせつつ、「新しいエンターテインメント、工学のありかたが見えてくれば素敵だと思っています」という。
発表会には「11歳のころからシャアになりたかった」というガンダムファンで知られるミュージシャンのSUGIZOさんも登場。「さまざまなクリエイターが育っていったガンダムという作品の新しい門出に富野さんと立たせていただいて恐縮している。次なる夢がやっと現実に近づいてきている。(戦争が相次ぐ)ガンダムの世界のようにはなってほしくないが、テクノロジーが平和的利用で進化していき、新たな夢の実現に向かっていけたら、一ファン、一大人としてうれしい」と話した。
富野監督「ロボットは介護用に特化すべき」
富野監督は2009年公開の実物大ガンダムについて「おもちゃカラー(赤・青・黄)の素晴らしさを感じた」という。「大仏的というかアイドル的なインパクトがある。実物大ガンダムを動かすことは今後のマイルストーンになるだろう」と期待する。
ガンダム第1作の制作当時は「35年前は絵空事だから好きかってやっていた。無節操にやることができかたら、夢の夢たるゆえんがあったのだろう」と振り返り、自身がアニメの世界に入るきっかけになった「鉄腕アトム」と同様、「工学者の憧れとして語られていることを考えてみれば、新しいガンダムのスタイルで夢を次世代に受け継いでいくことが必要だと思っている」という。
ガンダムは「絵空事」だったが、東京電力・福島第1原子力発電所の事故とそれをめぐる対応は「大人は保守的なものの考え方をする。そういうことが露呈してきた」「ガンダムのようなものとして語ることができる」という。事故処理を行うロボットが事故が起きるまで準備されていなかったとして、「ガンダムのようなものを見ている大人たちが現実ではそれをやっていなかったことは驚きだ」と批判する。
ロボットについては、自動車や半導体工場で活躍する産業用ロボットを「究極的なロボット」とみる。一方、一般向けでは「ロボットは介護・看護用に特化すべきだ」という持論を展開。「介護用ではないロボットは奨励しない。人の能力を劣化させる道具にしかならないからだ。介護用以外に進むと、より鮮明な格差社会になるのではないかとおそれている」とした。
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