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楽曲も衣装もファンがプロデュース “ソーシャルアイドル”notallが目指すもの

楽曲や衣装、CDジャケットまでファンとともに作り上げる“ソーシャルアイドル”notall。従来のアイドルとファンのつながり以上に、クリエイターの発表の場やお互いにつながるハブになりたいと展望を描く。

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 グループ名から楽曲までをファンの声で決定する“ソーシャルアイドル”「notall」(ノタル)が結成されて約4カ月が経った。ファンが制作した楽曲を収録したシングルも配信をスタート。今後さらにクリエイターを巻き込み、アイドルとしても大きなステージを目指していきたいと意気込む。

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片瀬成美さん、田崎礼奈さん、渡邊ちこさん、佐藤遥さん(左から)の4人グループ

 「notall」は、デジタルコミュニケーションを活動の中心とする“ソーシャルアイドル”だ。

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CDには“ソーシャルプロデューサー”のクレジットが

 アイドルやタレントによるTwitterやFacebookの活用は当たり前になっているが、拡散や告知など、あくまで実際の商品やイベントと補助的に使われていることが多い。notallが目指すのは、制作や企画、構想の段階から“ソーシャルプロデューサー”としてファンに関わってもらうことだ。デビュー曲「恋のスマソークラ」のCDの裏ジャケットにはライブ中にファンが撮影した写真が使われており、実際に“ソーシャルプロデューサー”としてクレジットされている。

 「単なる作り上げられたアイドルとファンという関係ではなく、アイドルとファンやクリエイターが一緒に活動することで新しい価値や形が生まれる。“to”ではなく“with”による共創コミュニケーションで盛り上げていく」と、博報堂アイ・スタジオの十字賢エグゼクティブプロデューサーはコンセプトを話す。

 約500人の応募の中からメンバー4人が選ばれ、グループ名もない状態“ソーシャルアイドル”という立て付けだけでスタートしたのが今年5月末。SNSを活用した最初の募集は「グループ名」を付けることだった。

 メンバーの1人“さとはる”こと佐藤遥さんは「正直、まったく応募がなかったらどうしようって不安でした」と振り返る。それもそのはず、結成したばかりで何の活動もなく、ファンもゼロからのスタートだ。しかし「何も決まってないからこそ、参加するのが簡単だったんじゃないでしょうか。『募集してるらしいから何か適当に書いとくか』みたいな。知ってもらうきっかけとしてはそれで十分」(さとはるさん)。グループ名「notall」は、短くて読みやすいこと、音の響きがよいこと、検索しても他のワードが出にくいこと、などからメンバーも満場一致で決まったという。

photo メンバー全員がTwitterアカウントを持ちファンと交流
photo 一番熱心に使っているべちこさん。「ライブ終わったらすぐにnotallでツイート検索してお気に入りします。『さすがソーシャルアイドル、捕捉が早い』とか言われたり(笑)」

 グループ名にはじまり、メンバーそれぞれが名乗るニックネーム、ロゴマーク、ステージ衣装などもファンの投稿から選ばれ、着々と「育ててもらっている」(“べちこ”こと渡邊ちこさん)というnotall。寄せられた案はメンバーもすべて目を通し、自ら中心となって議論しているという。「勝手に決められている感覚は全くなくて、いただいた声を元に自分たちで選べるのはむしろ自由! いい意味で明確なコンセプトもないのでそれぞれの個性に合わせて考えられるし、提案される振り幅も広くて楽しい」(さとはるさん)。

 8月には「恋のスマソークラ」の楽曲プロモーションビデオに利用する動画、次のCDに収録するリミックス曲、メンバーをキャラ化したLINEスタンプ、電子書籍に収録する恋のエピソード――の4つのコンテンツを募集した。英語圏のサイトで紹介されたこともあり、リミックス曲はインドネシアやルーマニアなど国外からの応募もあったという。

 まだまだファン自体や応募数は少ないものの、自らが素材やアイデアとなることでクリエイターとのコミュニケーションを産み出している手応えはあるという。「LINEスタンプを作ってみたかったんですが、なかなか題材が思いつかなくて」というところからこの企画に興味を持ち、結果的に継続的に応援してくれる人もいるそうだ。

 「これだけアイドルがたくさんいる時代、まずは知ってもらうきっかけを作るのも大変。アイドル文化は揶揄されることも少なくないですが、誰かを応援する気持ちが創作につながる新たなサイクルを生み出したい」(ワロップ放送局 山本真悟プロデューサー)

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運営を手がけるワロップ放送局 山本真悟プロデューサー(左)と博報堂アイ・スタジオ 十字賢エグゼクティブプロデューサー

 23日に発売予定のシングルに収録された1曲「ボクのカケラ」は一般からの応募が採用された初めての楽曲だ。ファンが作った曲をファンが作った衣装でアイドルが歌い踊り、またファンを増やしていく――。アイドルを中心としたコミュニティとしての結びつきを強めるのはもちろん、クリエイター同士のつながりも生まれていけば、と山本プロデューサーは展望を話す。

 パフォーマンスの意味でも大きなステージを目指していきたいと力強く語る。「みなさんの夢も背負って大きくなっていくんだなという気持ちが強い。曲を作る人、写真を撮ってくれる人、イラストを描いてくれる人、それぞれがnotallと一緒にステップアップしていけたらそれが一番の幸せ」(さとはるさん)

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