「人間らしい見かけだけが、人間らしさを表現する方法か」――東京大学と大阪大学は7月29日、“生命らしさ”を持つという機械人間「オルタ」(Alter)を発表した。オルタは、動きの複雑さによって人間らしさを表現することに挑戦したアンドロイド。皮膚に相当する部分を最小限にし、機械がむき出しとなっている。
開発したのは、東京大学大学院総合文化研究科の池上高志教授と学生の土井樹さん、大阪大学大学院基礎工学研究科の石黒浩教授と助教の小川浩平さんの4人。主な役割分担としては、ロボット作りを担当する大阪大学では小川さんがアンドロイドを制御するツールを開発し、人間らしさの制御を担う東京大学では土井さんが動きや音をメインに担当した。
石黒浩教授といえば、人間そっくりなアンドロイドを作ることで有名な研究者だが、これまでは「人間を真似ることでヒトの存在を意識させること」を目的としていたのに対し、今回は見かけではなく、動きや音との同調による人間らしさの表現に挑戦した。見かけのコンセプトは「テレノイド」を一部踏襲し、あえて性別や年齢が不明な顔にしているという。
ボディーは42本の空気アクチュエーターで構成。周囲の空間に設置したセンサーで距離や明るさの数値を取り、それに基づきオルタは自律的・反応的に動くという。関節にはCPG(Central Pattern Generator/歩行などの周期的な運動を発生する脊髄神経回路網)が割り当てられている。
オルタは7月30日〜8月6日の間、日本科学未来館7階のスタジオで展示される。見学は無料で、展示中も来場者の感想を聞きながら会場内で開発、アップデートしていくという珍しい形式だ。
「動きの中に生命があり、物質には生命はないのではないか」――池上教授は言う。1週間後、オルタはどう進化しているのか。機械の吐息が聞こえる。
(太田智美)
関連記事
- 太田智美がなんかやる:女子高生AI「りんな」開発チームに呼び出された
botとは何か。 - 太田智美がなんかやる:DMMの「超巨大デジタルアート展」がとにかくものすごく最高だった
「お台場みんなの夢大陸2016」で超巨大なデジタルアート作品群が展示されている。その展示がとにかく最高だった。 - ドローン実験施設に20億円 政府、経済対策に盛り込みへ
政府は経済対策で、ドローンなどの実験施設整備に20億円規模を充てる方針を固めた。 - “電波圏外”のロボット、ドローン経由で遠隔制御 災害現場・山間部で活用へ
電波が直接届かない場所にあるロボットを、中継装置を積んだドローンを経由して遠隔操作・監視する技術を、NICTや産総研が開発。 - クルマがドライバーの感情を理解する“相棒”に ソフトバンクとホンダ、AI技術を共同研究
ソフトバンクとホンダが、AI技術「感情エンジン」をモビリティに応用する共同研究をスタート。クルマが感情を持ち、ドライバーの“相棒”のようになる世界を目指す。 - 宇宙ステーションを模した閉鎖環境に2週間滞在 JAXAが被験者を再募集 8月3日まで
JAXAが、国際宇宙ステーションを模した閉鎖環境に2週間滞在する被験者を一般募集。今年2月の実験に続き、2度目の募集となる。 - 東芝の白物に続き、独最大のロボットメーカーも……中国企業が相次ぐ買収 “技術”買い漁る狙いは
中国資本が電機・部品産業の事業買収を積極化している。そこには、単なる金もうけではない、「製造強国」を目指す中国の壮大な野望が透ける。 - DeNA、人工知能活用の新会社 交通サービスなどに応用へ 守安社長「2〜3年で天地がひっくり返る」
DeNAが人工知能関連ベンチャー「PFN」と合弁会社「PFDeNA」を設立。機械学習やディープラーニングなどの技術をゲーム事業や交通サービスなどに活用する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.