電車にはハンドルがないのになぜカーブを曲がれるのか 東京大学で勉強してきた:太田智美がなんかやる
東京メトロと東京大学生産技術研究所が開催した「鉄道ワークショップ」で、電車はハンドルがないのにカーブを曲がることを知る。なぜ、そんなことが可能なのか?
「電車はハンドルがないのにカーブを曲がる」――東京都中野区にある東京メトロ「中野車両基地」で、こんなことを知った。言われてみれば電車には自動車のようなハンドルがなく、車輪を自由に操作できない。なぜ、電車は線路に合わせてカーブするのか。東京大学で勉強してきた。
そもそも電車の車輪は自動車とは異なり、左右の車輪が車軸でつながり一体となっている。これをハンドル操作なくどう制御しているのだろうか。
鍵となるのが、車輪に付けられた「傾き」である。前回、中野車両基地で外に向かって切り下がっている車輪を見てきたが、まさにこの“切り下がり”がカーブを曲がる秘密だったのだ。
まずは4つの車輪の模型で実験。「切り下がりのない円柱の車輪」「80度の角度を持つ円錐の車輪」「70度の角度を持つ円錐の車輪」「とがった円錐の車輪」の4つを同じレールに置いてみて、それぞれがどのようにカーブに対応するのかを調べてみた。
それでは、「切り下がりのない円柱の車輪」から!
結果は失敗。カーブに差し掛かってもまっすぐに進もうとし、レールから車輪部分が落ちてしまった。
次に、「80度の角度を持つ円錐の車輪」で実験。
こちらも結果はNG。カーブを曲がろうとしたが、途中で脱線してしまった。
続いて、「70度の角度を持つ円錐の車輪」。
今度はうまくいった。無事にカーブを曲がり、レールが途切れる最後まで辿り着いた。
最後は「とがった円錐の車輪」。
こちらもカーブのところで多少ゆらゆらと不安定な動きはあったものの、ゴールまで辿り着いた。
ここで実際の車輪を思い出してみる。車輪は外に向かって切り下がっており、円錐のような形をしていた。例えば、円柱・円錐それぞれを転がしてみるとする。すると、円柱はまっすぐに転がり、円錐は円を描くように転がることが分かる。この動作のことを「輪軸の自己操舵機能」と呼ぶ。電車の車輪もそれと同じ原理で、円を描くように転がろうとする「自己操舵機能」によってカーブするという。
2日間のワークショップに参加し、電車には構造力学、材料力学、材料学、機械力学、音響工学、環境心理学、機械力学、制御工学、トライボロジー、電気工学、電子工学などの技術が集結していることを知った。IT業界人に鉄道好きが多いのはそのためだろうか?
(太田智美)
筆者プロフィール
小学3年生より国立音楽大学附属小学校に編入。小・中・高とピアノを専攻し、大学では音楽学と音楽教育(教員免許取得)を専攻し卒業。その後、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科に入学。人と人とのコミュニケーションで発生するイベントに対して偶然性の音楽を生成するアルゴリズム「おところりん」を生み出し修了した。
大学院を修了後、2011年にアイティメディアに入社。営業配属を経て、2012年より@IT統括部に所属し、技術者コミュニティ支援やイベント運営・記事執筆などに携わり、2014年4月から2016年3月までねとらぼ編集部に所属。2016年4月よりITmedia ニュースに配属。プライベートでは約1年半、ロボット「Pepper」と生活を共にし、ロボットパートナーとして活動している。2016年4月21日にヒトとロボットの音楽ユニット「mirai capsule」を結成。
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