使用済みコピー紙からまっさらな紙――“水不要”なオフィス製紙機「PaperLab」、エプソンが12月発売
水を全く使わず、使用済みのコピー用紙から新しい紙を作れるオフィス製紙機「PaperLab A-8000」を、セイコーエプソンが12月に発売する。
セイコーエプソンとエプソン販売は11月30日、使用済みのコピー用紙から新しい紙を生産できるオフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)A-8000」を12月から順次発売すると発表した。水を使わずに、文書情報などを完全に抹消した上で、厚さが異なるオフィス用紙、名刺用紙を作れる。実売予想価格は2000万円台前半(税別)。
使用済みのコピー用紙(A4/A3サイズ)を入れて、開始ボタンを押してから約3分で1枚目の紙を生産。A4サイズなら1時間当たり約720枚を作れるという。A4/A3サイズのオフィス用紙のほか、名刺に使える厚紙や色紙なども作れる。
本体サイズは、2.6(幅)×1.2(奥行き)×1.8(高さ)メートルで、「オフィスのバックヤードなどに設置できるサイズ」(同社)としている。
一般にA4サイズの紙1枚を作るにはコップ1杯の水が必要とされるが、PaperLabは水を全く使わずに紙を作れる技術「Dry Fiber Technology」を採用している。その仕組みはこうだ。
まず、装置の内部で使用済みの紙に衝撃を与え、綿のような細長い繊維に変えることで、文書情報などを抹消。繊維状にした材料に、粉状の結合素材「ペーパープラス」を混ぜ、密度や厚み、形状をコントロールしながら、新しい紙に成形する――という。ペーパープラスは消耗品で、プリンタのインクのように交換でき、できあがる紙をより白くしたり、色を付けたりも可能だ。
元の紙を繊維にまで分解し文書情報を抹消できるため、セキュリティ向上につながるほか、「水を使わない」「紙の購入量を減らせる」など環境負荷の低減にも貢献できるという。
PaperLabは、同社が2015年12月にプロトタイプを発表し、塩尻市役所(長野県)や住友理工、八十二銀行などの企業・自治体が先行して導入。実際に使用したデータやアイデアを提供してもらい、商品化を目指していた。事前に問い合わせがあった企業から順に販売を始め、それ以外の企業だと2017年秋頃の提供になる見込みという。
エプソン販売の佐伯直幸社長は「従来の製紙機は“装置”ではなく、大量に水を使う“設備”だった。それを装置のレベルまで小型化できた」と話す。「私たちが得意としているインクジェットプリンタの製品とPaperLabを組み合わせ、循環型のオフィス作りを促したい」(佐伯社長)。
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