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「イノベーティブでクールじゃないと、がっかりされると思っていた」――元Apple社員が開発、IoTサービス「まごチャンネル」が生まれるまでクラウドファンディング「成立」のその後(1/3 ページ)

Appleを退職してから何をすべきか迷っていた――IoTサービス「まごチャンネル」を開発した梶原さんに、狙いと思いを聞いた。

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 2015年の敬老の日を前に、おじいさんやおばあさんが住む家と孫をつなぐサービスが登場した。その名も「まごチャンネル」だ。

 まごチャンネルは、家庭のテレビと専用端末をケーブルで接続し、スマートフォンからテレビに画像や動画を送れるようにするサービス。「実家住まいのおじいちゃんやおばあちゃんに孫の姿を届ける」といった使い方ができ、15年9月にクラウドファンディングサービス「Makuake」に登場すると、目標額の100万円をわずか50分で達成。最終的に約571万円を調達して話題になった。

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 開発したのは、2014年設立のスタートアップ・チカク(東京都渋谷区)。創業者である梶原健司さんは、米Appleの日本法人・アップルジャパンに12年間勤めていた経歴の持ち主だ。

 梶原さんはなぜアップルを退職し、まごチャンネルの開発に着手したのか。クラウドファンディングを活用して資金調達に成功してから何が起きたのか――これまでの経緯と今後について聞いた。

何をするか決めないまま、Appleを退職

 梶原さんは新卒でアップルジャパンに入社し、プロダクトマーケティングや新規事業立ち上げなどに携わってきた。12年務めたタイミングで、なぜ退職の道を選んだのか。

 「もともとアップルは3年でやめるつもりだった」と梶原さんは言う。「もともと独立を考えていたから、3年でやめるつもりだった。しかしそのころはiPodやiPhoneをはじめ、Appleを代表する商品が次々に生まれていた時期。どんどん仕事が面白くなり、気づけばあっという間に12年たっていた」。

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梶原さん

 思いを変えるきっかけになったのが、11年3月に起きた東日本大震災だ。当時、梶原さんは35歳。「これからの人生をどう過ごしていくか考えさせられた」――そのとき頭をよぎったのが、スティーブ・ジョブズの「follow your heart」という言葉(スタンフォード大学で行ったスピーチの一節)だったという。「何か新しいことに挑戦したい」という自分の思いに正直に生きようと、同年11月にアップルを退職した。

 しかし退職後に何をするか決めていなかったため、しばらくは前職の同僚の仕事を手伝いながら、次の1歩を模索していた。「アップルにいたことで、次に何を始めるにしてもイノベーティブでクールなことでなければいけないと、自意識過剰にすごく気負っていた」と梶原さんは笑う。「何かイノベーティブなことを始めないと周囲の人ががっかりするのではと、勝手にプレッシャーを感じていた」。

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