漫画家・佐藤秀峰さん、Amazonを提訴 Kindle読み放題の配信停止問題で
佐藤さんは「作家、出版社が大きな損害を被ったことはもちろんだが、最も大きな損害を与えられたのは読者だ」と指摘している。
Amazon.co.jpの定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」で、提供する作品の配信を一方的に停止されたとして、漫画家の佐藤秀峰さんが米Amazon Services Internationalに対し、約2億600万円の賠償を求める訴訟を起こしていることを5月19日に明らかにした。
日本版のKindle Unlimitedは、和書12万冊以上、洋書120万冊以上(スタート当時)の電子書籍が月額980円(税込)で読み放題になるサービスで、昨年8月3日にスタートした。佐藤さんが代表を務める佐藤漫画製作所は、取次会社を介してAmazonに作品を提供し、2016年8月3日〜12月31日の間は「(上乗せ料金が発生する)特別条件でロイヤリティーが支払われることが約束されていた」という。
だが、サービス開始から約1カ月後、Amazonから支払い方式を変更したいと要望があったという。佐藤さんによれば、一方的な不利益変更を求める内容で、同意しない場合は、新規コンテンツの配信を中止し、配信中のコンテンツの一部も削除するとAmazonが提示。佐藤さん側が条件変更を拒否したところ、9月1日に一部作品が削除され、それ以降は16年内に配信予定だったコンテンツも全て配信されなかったという。
佐藤さん側は9月28日、賠償を求める内容証明郵便をAmazonに発送。これに対しAmazonは「提供されたコンテンツを自由に配信、停止する裁量権を有している」「賠償義務はない」と回答し、10月7日には全コンテンツの配信を停止したという。それらの配信が再開されたのは、ロイヤリティーの特別条件期間が終了した1月1日だったという。
これらを受け、佐藤さん側は約2億629万3710円の支払いを求めAmazonを提訴。
佐藤さんは、読者の立場からすると「(配信予定のラインアップを見て)『ここに置いてある本は読み放題ですよ』と言われたからこそ、お金を払った」とコメント。しかし実際は「大量の本がごっそり消えたことになる」と、読者へのAmazonの“裏切り”を指摘する。「作家、出版社が大きな損害を被ったことはもちろんだが、最も大きな損害を与えられたのは読者だ」として、「読者の信頼を回復するために」訴訟を決めたという。
Kindle Unlimitedで作品配信を停止されたのは、佐藤漫画製作所だけではない。昨年9月末には、講談社が1000タイトル以上を一方的に削除されたとしてAmazonに抗議している(関連記事)。一部報道によれば、小学館、光文社など、一時は約20社が全作品を削除されたという。
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