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「少年ジャンプ」の変わらぬ思いをデジタルへ  公式漫画制作ツール「ジャンプPAINT」が目指すもの(3/4 ページ)

少年ジャンプ初の公式漫画制作ツール「ジャンプPAINT」。ただの制作ツールではないと言うが……

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公開前に大事件 「スマホだけで描いた」漫画が登場

 デジタル派を発掘するため、さまざまな工夫を凝らしたジャンプPAINT。だが、週刊少年ジャンプがこうしたツールを提供するのは初の試み。受け入れられるか、利用してもらえるか、不安だったという。

 しかしそんな不安とは裏腹に、公開前にデジタル派の需要を証明するような「ある事件」が起こった。「スマホ派」の登場である。

 ジャンプPAINTは開発当初、主にPC、タブレットでの使用を想定。スマホにも対応予定ではあったが、「スマホだけで描く人が出るのは、まだまだ先だろうと思っていた」(籾山さん)という。

 その予想が裏切られたのは2016年。スマホだけで描いた漫画がジャンプが開催する「矢吹健太朗 漫画賞」で奨励賞を受賞した。あつもりそうさんの「あなたが恋と言うのなら」という作品だった。

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「あなたが恋と言うのなら」(「ジャンプルーキー」より)

 「気付いたのは、受賞から1、2カ月後。ちょうどジャンプPAINTのローンチに向けて調整をしているタイミングだった」と籾山さんは振り返る。「選考時、デジタル作品なのは分かっていたが、まさかスマホで描いたとは思わなかった」

 しかも、あつもりそうさんが使ったのは開発元のMediBangが提供する「メディバンペイント」のスマホアプリ。PCやタブレットにも対応するこのソフトこそ、ジャンプPAINT開発のベースになっているものだった。

 「当時、あつもりそうさんは受験生。家で隠れて漫画を描くにはスマホ以外では難しいという事情もあったようだが、ペンも使わずに指だけで描いたというので、なお驚いた。正直、こういう人が現れるのはもっと先の話かと思っていた」(籾山さん)

 そう話す籾山さんは少々苦笑い。「編集部の予想よりもずっと、応募者たちは先を進んでいるかもしれない」と感じたが、うれしい誤算だったという。公開後は「今のところ好意的な意見が多く、受け入れてもらえたようで安心した」(籾山さん)。

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