稲の“健康診断”ドローンで ヤンマーとコニカミノルタが新会社
ヤンマーとコニカミノルタが合弁会社「ファームアイ」を設立。ドローンやセンシング技術などを活用し、農作物の生育状況や土地の栄養状態を診断するサービスを提供する。
ヤンマーとコニカミノルタは9月29日、ドローンを使った農作物の生育状況診断サービスを提供する合弁会社「ファームアイ」を10月1日付で設立すると発表した。田畑の上空から撮影した画像から肥料が不足している場所などを特定し、農作業の効率化をサポートする。農家が長年の経験からくる“勘”に頼っている作業を“見える化”し、後継者に伝承しやすくする狙いもある。
資本金は2.5億円で、出資比率はヤンマーが51%、コニカミノルタが49%。社長にはヤンマーの吉田博常務が就く。コニカミノルタが持つセンシング技術や画像処理技術と、農作機械を提供しているヤンマーのノウハウを組み合わせる。
まずは国内の農家向けに、稲の“健康診断”サービスを提供する。稲がある程度成長した段階でドローンが上空から写真を撮影。画像処理技術によって、栄養が不足している、あるいは過剰な場所を特定し、地図上にマッピングできるという。
これまでは、植物の葉緑素(色の濃さ)を基に健康状態を測る仕組み(SPAD)が主流だったが、人力で葉を1枚ごとに測定するなど、手間がかかっていた。ヤンマーとコニカミノルタは14年からドローンと画像処理技術を使った新手法をテスト。上空から広範囲を一気に計測できることで省力化しつつも、SPADと同様の精度を実現できたという。
診断費用は、1ヘクタール当たり1万2000円(ドローンによる撮影、データ分析、アドバイスなど含む)。診断した情報をもとに、ヤンマーが無人ヘリを使って肥料を上空からまくサービスなども提供する。
今後、小麦や大豆、サトウキビなどでも同様のサービスを展開予定。アジア地域を中心に海外展開も見据える。2023年度までに国内の水田面積の30%(約4000軒)に導入を目指し、年間100億円規模(ドローンなど機器の販売も含む)を売り上げる考えだ。
農家の勘を“見える化”
ヤンマーの鈴木岳人副社長は「農家の勘や経験値を“見える化”する」と話す。同社はこれまで、農作機械の位置情報、稼働状態などを一括管理するサービス「スマートアシスト」を提供してきた。近年、農業就労人口の減少や小規模農地の集約が進む中で、農作業全体を省力化し、“農業離れ”を防ぐのが狙いだ。
ファームアイの吉田博社長は「経験が少ない農家でも、ドローンに指示を出せば、データに基づいた的確な農作業が行えるようになる。生育データを一元管理し、収穫期を見定め、市場ニーズに応じた作物を栽培・出荷できる。そんな未来もそう遠くない」と話した。
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