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「自動運転レベル=クルマの価値ではない」 モータージャーナリストが指摘

「自動運転レベルが高い=クルマの価値が高いとは思わないほうがいい」――モータージャーナリストの清水和夫さんが指摘。その真意は。

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モータージャーナリストの清水和夫さん

 「自動運転レベルが高い=クルマの価値が高いとは思わないほうがいい」――元レーシングドライバーでモータージャーナリストの清水和夫さんが、都内で開かれたシンポジウム「安心・安全につながる車社会の実現を目指して」(11月1日、セキュアIoTプラットフォーム協議会主催)でそう話した。場合によってはレベル3よりもレベル2のクルマの需要があるという。その真意は。

 自動運転車は、ドライバーが運転操作にどの程度関与するかに応じてレベル0(運転自動化なし)〜5(完全運転自動化)という区分がある。内閣官房によれば、レベル3は「システムが全ての運転タスクを実施。作業継続が困難な場合の運転者は、システムの介入要求などに対して、適切に応答することが期待される」とある。独Audiは、レベル3相当の自動運転機能を搭載するセダン「Audi 8」を2018年に日本で発売するとしている。

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「官民ITS構想・ロードマップ2017」より(PDF

 清水さんは「レベル3は、システムとドライバーの間で運転責任が行ったり来たりするため(開発・運用が)難しい」と指摘する。

 国土交通省が注意を呼び掛けているように、17年時点で実用化されている『自動運転』機能は、完全な自動運転ではない(関連記事)。例えば、悪天候時に路面が反射した光で、車載カメラやセンサーに不具合が起きる可能性がある。ドライバーはそうしたシステムエラーに備え、常にハンドルを握るなど「機能を過信せず、責任を持って安全運転を行う必要がある」(同省)。

 清水さんは「システムがエラーを起こし『運転できない』と判断すると、急に支援が途絶え、ドライバーに全ての操作を任せる」と説明する。システムが「運転できない」と警告してからドライバーにバトンタッチする時間(トランジションタイム)は、メーカーによってまちまちで約4〜10秒間。「(事故を起こしても)責任はドライバーにあるが、約4秒間でドライバーが元の状態に戻れるか(事故を避けられるか)は、テストコースではなく実際の道路で試してみないと答えは出ない」と清水さんは主張する。

 「例えば、システムに任せて100メートル走ると調子が悪くなり、ドライバーに権限移譲するレベル“3.1”に需要はあるのか。それなら最初からドライバーの責任で、かなり高度な支援運転を提供する“レベル2.9”にお金を払うユーザーもいるかもしれない」

 レベル2と3、どちらに注力するかは「自動車メーカーの安全思想による」と清水さん。渋滞中はシステムに運転を任せ、化粧をしたり、スマートフォンを見たりするくらいはいいのでは、というユーザーの意見もある。そうしたニーズをくみ取り、レベル3を提供するのがAudiという。一方、トヨタ自動車はまずレベル2でシステムを成熟させ、一気にレベル4に進む考えのようだと清水さんは説明する。

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レベル3相当の自動運転機能を搭載する「Audi 8」(東京モーターショー2017にて撮影)

 毎日のように多くのクルマと接しているという清水さんは、「クルマごとにスイッチやアラームが異なり、どの部分に異常が出ているか分からなくなる」とも。「システムの機能限界が、ドライバーにとって分かりやすいようにしないと知らないシステムの監視はできない」とし、クルマをシェアしたり買い替えたりするとき、認知判断が遅れる可能性を指摘する。「基準化すると自由な競争が妨げられるが、自動車メーカー各社が分かりやすいHMI(ヒューマンマシンインタフェース)を作れるかが鍵を握る」(清水さん)

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