AIが脅かすのは「単純労働でなく知的労働」――ソフトバンクが語る、シンギュラリティの誤解
ソフトバンクロボティクスの吉田健一本部長は、「AIは単純労働に影響をもたらすと思われているがそれは誤解だ」と語る。
コンピュータが人間の能力を超える――「シンギュラリティ」(技術的特異点)が2045年に訪れるといわれている。そんな中、ソフトバンクロボティクス事業推進部の吉田健一本部長は、同社のロボットカンファレンス「SoftBank Robot World 2017」(11月21〜22日)の基調講演で、「シンギュラリティは単純労働に影響をもたらすと思われているがそれは誤解だ」と述べた。
よく「AI(人工知能)は人の仕事を奪うか」という議論があるが、その議論の際真っ先に出てくるのが「単純労働はロボットやAIに代わる」という話だ。吉田さんは「単純労働に影響をもたらすのではない。ファンドマネジャーや医者、弁護士といった知的生産物を創造する『ナレッジワーカー』にこそ影響する」と話す。具体的には、患者のサポートを行う看護師の価値は上がるが、ドクターの判断は必要なくなるという。逆に、肉体労働や職人仕事、介護といった仕事はしばらくの間なくならないと予測する。
理由は、人間の肉体作業をロボットで行うのはかなり難しいため。例えば、一見単純労働に見える清掃員の仕事をロボットに代替してもらうのは困難だという。実際、ソフトバンクの汐留本社では、清掃員の仕事の半分は「ごみ捨て」。東京都の条例に合わせて分別したり、ごみ袋を取り換えたりと、肉体労働が伴う仕事だ。また、トイレや階段、エレベーターといった場所の掃除も難しい。先日同社がBrain社の自動運転技術(Brain OS)を搭載した搭乗式スクラバー(床洗浄機)を発表したが、まだフロアの清掃というほんの一部にすぎない。
吉田本部長はビジネスモデルの破壊的再定義が必要とし、「仕事を奪われるのではなく、ロボット+人間の新しいビジネスモデルを構築したものが勝つ」との考えを述べた。
(太田智美)
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