検索
連載

Googleに詰問するならGoogleさん

Googleのスンダー・ピチャイCEOを招請した公聴会が12月12日に開かれました。個人データ収集や中国再進出について問い質す目的でしたが、成果はいまひとつでした。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 米下院司法委員会が12月12日に開いたGoogleのスンダー・ピチャイCEOを招いての公聴会は3時間以上もかかりましたが、茶番のようなシーンもあり、残念ながらほとんど収穫はなかったようです。

 ピチャイさんは終始冷静で、あの誠実そうな態度を変えずにピントのずれた質問にも静かに答え続けました。

 pichai 1
とんちんかな質問にも誠実そうな態度で答えるピチャイさん

 ピチャイさんは、Twitterのジャック・ドーシーCEOとFacebookのシェリル・サンドバーグCOOと一緒に9月の公聴会に招請されたときは「代理じゃだめ?」「だめです」「では欠席します」ということで欠席しました。

 それから3カ月の間、みっちりリハーサルしてきたのかもしれません。ピチャイさんはMicrosoftのサティア・ナデラCEOと同様、インド出身のエンジニアとしてCEOになった頭脳超明晰な人(ちょっと古いし要購読ですがBloombergのピチャイさんについての記事でよくわかります)です。それでも、公聴会を乗り切るには特有のスキルが必要です。Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOなんて、本番前にメディアの精鋭を集めてリハーサルしたくらいです。

 公聴会を乗り切る(企業側にとっての)ポイントは、いかに都合の悪いことの言質を取られないようにするか。議員側は、いかに追い詰めて知りたいことを言わせるかが勝負どころです。

 ピチャイさんはさすがでした。中国での政府検閲可能検索サービス「Project Dragonfly」については、「Googleは世界中の人が情報にアクセスしやすいようにするのがミッションなので、中国でもそれができるかどうか検討はしているけど、まだ検討の段階です。進展があったら報告します」というスタンスを崩しませんでした。

 ちょっとだけあった収穫の1つは、キース・ロスフス議員(共和党)の「そのプロジェクトは何人が従事している?」という質問に「100人以上」と答えたことです。Googleくらいの大きな会社になれば、リリースするあてのない検討のために多くのリソースを投じるのかもしれませんが、100人はどうなんでしょう。ちなみにこのプロジェクトは8月にメディアがすっぱ抜くまでピチャイさんも知らなかったそうです。

 公聴会があまり実りあるものにならなかったのは、議員側の準備、知識不足のせいでもあります。

 記事でも紹介しましたが、AppleのiPhoneの機能について質問する人(実際にはGoogleの広告ネットワークについての質問のようでしたが、自分で「iPhoneの」と言ってた)もいました。

 pichai 2
「iPhoneでなぜそんなことが起きるのか?」と詰問

 テッド・ポー議員(共和党)も自分のiPhoneをかかげ、「これを持って私があっちの席に移動したら、それをGoogleは把握するのか?」と質問。iPhoneですが、ピチャイさんはGoogleマップを使っているとして、と忖度したのでしょう。「設定によります」と答えました。ポー議員は「オプトインで位置情報を追跡するGoogleのサービスを使っていれば」と答えるピチャイさんを遮り、「年俸1億ドルもらってる(2016年の実際の年俸は65万ドル)んだからちゃんと答えられるでしょう。答えられないなんてショックだ」と言いました。

 pichai 3
振りかざしたのはこちらもiPhone

 せっかくオプトインの話になったので、例えば「でもオプトインにしなくても位置情報収集してたじゃん」と突っ込むこともできたのに、残念です。

 議員さんたちはITだけでなく、いろんな問題を考えなくちゃいけないので、iPhoneがどこの製品かとか個人情報設定とか検索アルゴリズムの基本的な仕組みとかまでいちいち覚えておくのは難しいんだと思います。それにしても、このままでは何度公聴会を開いても時間の無駄になってしまいそう。

 公聴会に、ゲスト質問者を招請できるようにして、例えばRecodeのカーラ・スウィッシャーさんに質問させてほしいところ。スウィッシャーさんは、公聴会を難なく乗り切ったザッカーバーグさんを鋭い質問で汗だくにさせた手腕の持ち主なので。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る