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「データサイエンティスト・ラプソディ」 なぜ優秀なAI人材は転職するのかマスクド・アナライズのAIベンチャー場外乱闘!(2/4 ページ)

「優秀なデータサイエンティストを採用できない」「人材が定着しない」――そう嘆く前に、まずは自分たちの組織の体制や環境を見直してみましょう。とがったAI人材を許容できる環境作りはできていますか?

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 「ジャーンジャーン」というドラの音は鳴り響きませんが、人材獲得競争は三国志の魏・呉・蜀ならぬ、日・米・中による動乱の世です。「げぇっ外資」と驚く間もなく、中国のファーウェイ(華為技術)は2017年に新卒初任給40万円の求人を出して話題になりました。日本マイクロソフトも開発職の初任給を年俸730万円にしましたが、これらは三国志の世界に火縄銃が登場するほどの衝撃です。

 ちなみに、弊社が相談を受けている大手製造業の初任給は22〜23万円程度。初任給で勝負しても火縄銃の的になるだけなので、正面からの戦いは避けた方が良さそうです。

 実際のところ、子供のころからクルマなどの機械が好きな学生もいるでしょうし、知名度の高い日本企業なら親御さんも安心し、何なら合コンでもモテそうです。経営不振でメモリ事業を売却したり台湾企業の傘下になった電機メーカーもありますが、ニッポンの大企業に就職するのは悪くない選択肢ともいえます。

 ひとまず、ここでは「清らかな心を持った安定志向の学生が新卒で大手製造業に入社した」と仮定し、企業が抱える課題を浮き彫りにしたいと思います。

優秀な人材を採用できたが……

 製造業においてデータサイエンティストが活躍する場面は非常に多く、製品開発、製造工程、品質管理、生産ラインなどさまざまな業務での活躍が期待されます。

 せっかく採用できた貴重な人材ですから、将来の幹部候補として優遇されるかもしれません。それでは、入社後の活躍ぶりを見てみましょう。

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新卒社員の活躍(画像は筆者作成。以下同)

 本来の業務と無関係な研修、会社貸与の低スペックなPC、新人恒例の忘年会幹事――こうした退職フラグをいくつも立てられ、結果、3年もたたずに辞めてしまいました。

 「データサイエンティストらしい仕事をしていないのでは?」と心配になった新人は、最初から大きな仕事ができると勘違いしたのでしょう。社会人というのは若いころは苦労するのが当然であり、今ある道具と環境で知恵を出しつつ汗をき、現場を学ぶべきなのかもしれません。甘えた新人は「サンデーモーニング」で張本勲さんに“喝”を入れてもらいましょう、ということで企業は中途採用にかじを切ることにしました。

好待遇や自由な環境を求め、やはり転職

 社会人経験のある中途採用なら、日本のものづくりを担う責任と使命に共感した人を採用できるはず。かくして、募集要項が作成されました。

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架空の求人票を作成

 学歴、スキル、実績全てを兼ね備えた秀才を募集する、満漢全席のように豪華な求人票ですが、満漢全席が登場するのは諸葛亮が饅頭を供えてから1000年以上先の話です。年収は400〜600万円程度で、求めるスキルに対してそこまで高給なわけではありません。

 時代を先取りしすぎた求人は、SNS(主にTwitterで暗躍するイキリデータサイエンティスト)にさらされて、会社のイメージダウンになる以外の効果は見込めません。もはや狙いすぎて「孔明の罠」を疑うレベルです。

 しかし、「悪魔は存在しない」と証明するのが不可能なように、こんな求人でも応募者が皆無とは言い切れません。というわけで、無事に求めていた人材を採用できたと仮定します。同業他社で身に付けた一騎当千なスキルを発揮し、「桃園の誓い」を結んだ関羽や張飛のような活躍を期待しましょう。晴れて仲間になった中途採用者のその後を追ってみます。

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中途採用データサイエンティストの活躍

 無駄に厳しいセキュリティや関係各所への社内調整など、さまざまな壁が立ちはだかりました。そして、社会の厳しさを経験している中途採用者も転職してしまうことに。

 やはり途中で会社を変える軟弱な人間ではなく、生え抜きの人材を育成すべきでしょうか。そして来年入社する新卒も退職し……と、どこかで見たループ展開ですが、狂気のマッドサイエンティストも魔法少女もアシュトン・カッチャーも出てきません。

 なぜ新卒・中途を問わず、データサイエンティストが退職してしまうのでしょうか。いよいよ問題の本質に迫ります。

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